俺のせいでみんなの足を引っ張るってことが嫌だった。
ライブなんて大イベントはそんなにめったにできるものじゃないし、前にライブの話が来たときはみんなでできることに喜んで、みんなで成功させた。
みんなやりたいって気持ちがあるのに、それを俺が叶えられないようにしてる。
ドア越しに照くんの声が聞こえる。
やっぱり心配したような、後悔してるような、いつもとは違う静かな声。
泣きはらして赤くなっているであろう目を擦り、布団から顔を上げた。
その直後ガチャッと音がしてドアが開く。
聞き慣れたふっかさんの声が聞こえた。
俺の視界に写るのは、照くんらしき人と、ふっかさんらしき人の2人。
他のメンバーには気をつかわせたのかもしれない。
照くんが俺と向き合った形でふっかさんと前に座って、こう語った。
言葉でも言ってたけど、声音的にも照くんは“俺が悪かった”なんて思ってるんだ。
実際みんなに迷惑かけてるのは照くんじゃなくて俺の方だから、ごめんなんて言わないでよ良いのに‥‥。
でもここで俺が泣いたらもっと心配かける。
だから唇をぎゅっと結んで、なんとか涙をこらえた。
もう俺の涙腺は限界だった。
こらえていた分の涙がどんどんと溢れていく。
ここで泣くなって思えば思うほど、涙は止まらなくなるような気がした。
でも2人は俺が話せる状態になるまで口を挟まずに待ってくれ、心に真摯に向き合ってくれる。
これは社会では“当たり前”じゃないかもしれない。
でも2人からしたら、SnowManの中では“当たり前”なのかもしれない。
いや、当たり前なんだ。
これがメンバーの役目なんだ。
俺は本当の思いを、自分なりの言葉で綴っていった。
脱退。
俺がメンバーのためにするべきことかもしれないけど、改めて言葉にすると、とても怖いものだった。
でも2人にやっと打ち明けることのできた、俺の本音。
まだまだ心に秘めている言いたいことはいっぱいあったけど、その中で一番俺が強く思ってたことだった。
視線を下に落として、涙のせいでさらにピントの合わなくなった視界の中で自然とぎゅっと握られている拳を見ていた。
照くんはこう言って、俺の固く握られている拳を優しく包み込んでくれる。
その手はいつも通りで、やはり温かくて、大きいものだった。
2人はすごく温かい言葉をくれる。
悲しさなのか感動なのか、流れてくる涙はどっちか分からない。
でもこれだけは確かだった。
俺は今もこれからも、SnowManで生きていきたい。
これは俺の目標であり、願いだった。
頬を伝う涙を拭って、精一杯にほほえんだ。
目の前の2人の思いに、今の俺なりに応えたい。
それがそう思った俺にできる最善のことだった。
照くんはとんとんと、元気付けるように俺の肩を優しくたたいた。
ふっかさんも
と、俺の反対側の肩をとんとんとたたいた。
他のメンバーにも話がしたかった。
それに、さっきのことを謝りたかった。
みんなは俺のために話し合ってくれたことなのに、俺はみんなの話も聞かずに部屋まで来ちゃったから。
照くんとふっかさんに手を取られながら、みんながいるというリビングまで向かった。
ガチャッ。
俺の前を歩く照くんが、リビングへと繋がるドアを開けた。
俺のぼんやりとした視界に広がるのは、さっきの話し合いみたいにテーブルを囲むみんなが。
ぼやけてるからもしかしたら勘違いかもだけどね。
俺の視界でテーブルのあたりから動きがあった。
みんなはこっちへと走ってくる。
そうだ‥‥みんなに伝えたいこと、言わなきゃ。
ラウールに抱きしめられながら、みんなの言葉を聞く。
俺の今の目では見えないけど、きっとみんなは真剣で、真っ直ぐで、でも優しい瞳をしてる。
さっきみたいに精一杯ににこっとほほえんだ。
もう見える見えないの問題じゃない。
俺は言葉でも言った通り、今もこれからも“SnowMan”でいられることが嬉しすぎるから。
今の俺にはその保証があるだけで頑張れる。
やっぱりみんなで笑わせて、笑い合える場所“SnowMan”が俺は大好きだ。
目なんかまともに見えなくても、この居場所があるだけで頑張れる。
苦しい治療だって、嫌な薬だって、この場所にいれるなら頑張ろうって思える。
SnowManがこのメンバーで本当に良かった。
これからもよろしくね、みんな。
メンバーごとの看病はこれにて『完』とさせていただきます。
今度めめが治ったバージョンのアフターストーリー出します!
お楽しみに✨
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。