目黒side
しょっぴーや舘さんと夜ご飯を食べ終わった頃、仕事へ行っていたメンバーが一緒に帰ってきた。
そしてその今帰ってきたメンバーは手洗いうがいを済ませてから、舘さんが作った夜ご飯を食べ始める。
何とか壁伝いにリビングまで行く。
迷惑かけたくなかったし、これくらい1人でできるって自分自身を信じたかったから。
ぼやける視界の中で障害物を避けながら、怪我とかもなく何とかソファーのところまで行くことができた。
でも、と言いかけて口を閉ざす。
ウノならトランプと違って数字が見えなくても何とかなる。
主に色が分かればできるし。
それなら弱視の俺にも、できる‥‥?
とんとん、と康二の横を軽くたたく。
俺は促されるままに康二としょっぴーの間へ腰かけた。
白いタオルらしきものを肩にかけた阿部ちゃんがリビングに入ってくる。
そして阿部ちゃんとバトンタッチでしょっぴーがお風呂へ。
俺もお風呂まだだったな。しょっぴーの後に入るか。
のぼせて顔を火照らせたラウールに照くんがコップを手渡す。
そして今度は照くんとふっかさんがお風呂へ行った。
全員がお風呂を入り終えて、時計の針は0時をまわった。
この後俺たちはすぐベッドへ入り、眠りについた。
のだが‥‥。
俺は喉の乾きで寝てすぐに目が覚め、ほぼ視界が真っ暗な中で1階まで水を飲みに行くことにした。
今はいつも階段でサポートしてくれる康二もいないから、より足元に気を配って一段一段丁寧に下っていく。
階段を下り終える、というところで俺はリビングからのざわめき声に気づいた。
そのリビングからはメンバーの声がした。
それも俺以外の全員の声が。
俺の存在がバレないようにそっと開けたドアの隙間から覗くと、恐らくテーブル辺りにみんなで集まっているだろうという光景が見えた。
弱視の中だから正確には分からないけど。
でも耳は聞こえるから話の内容は全然聞き取れる。
耳をすませて聞いてみると‥‥。
今の話、何?
ライブが中止?
俺のせいで‥‥?
俺が、弱視で活動休止中だから‥‥?
ライブなんて話、俺はここで初めて聞いた。
俺はいろんなことが信じられずにその場に立ち尽くしていた。
ガチャッ。
突如俺の前のドアが開く。
そしてそこには照くんらしき人が立っていた。
俺はこの状況に耐えられず、踵を返して弱視の中でも精一杯に階段を駆け上がった。
目黒待てっ!って必死に言う照くんたちの声を振りきってでも部屋へと走った。
浮かぶ涙をこらえようと、ぎゅっと目を瞑るけどそれは逆効果。
溜めきらなくなった涙が一筋頬を伝った。
壁に手をついて、何とか自分の部屋と確かめてから部屋へ駆け込む。
1人になりたかった。
誰にも会いたくなかった。
誰の顔も見たくなかった。
俺はそのままベッドに突っ伏し、布団へ顔を埋めて泣いた。
でも声が漏れないように静かに泣く。
弱視のせいか、今の俺には部屋が真っ暗でもどうでも良かった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。