忍術学園は休みで夕河は暇つぶしに一人でのびのびと散歩する事になり、夜までに帰ってこればいい。夕河はヘムヘムに見送られ出かけていった。
夕河はどんどん山奥へ、しかし迷わない様に草を結びながら入っていった。
そこには薬草やら花やら咲いており、まずは裏山の入り口の小川でネコヤナギを見つけてそして山道を登っていくと今度はオウレンの花にサンシュユの花など摘んだり、原っぱを転がったりしていた。
その時。
ドカーンッ!!!!!!!!
爆発音がして辺り一面が山火事になっていたので見通せばなんと戦になっていた。
逃げても逃げても人に巻き込まれて襲われているから投げナイフを使用しながらも崖まで走っており、そこはなんと行き止まりだった。
曲者に襲われて踏み外す。
ガラッ!
曲者に襲われても戦い慣れている為か受け身を取れていて体の使い方が上手かった。だからこそ、早まったのかもしれない。
途端にふわっとした感覚に囚われた。夕河は……落ちた。大した高さの崖ではないがそれでも子供にはそれなりの高さ、体中を打ち付け、その瞬間、目の前が真っ暗になった。
カァ…カァ…。
カラスが鳴き、日が傾き夕暮れになる。戦っていた曲者はニヤニヤ笑いながら眺めており、そしてその場にさった頃忍たま全員は夕河がいつになっても帰って来ないのだ。
一年は組は帰らぬ友を心配する。そして、日が落ちかける。流石に教師陣も心配し出した。中でも兄である留三郎は落ち着きなくハラハラして、居ても立っても居られなくなり、長次を連れて捜索に向かった。
二人は猛スピードで裏山へ向かった。その時、長次が何かを見つけた。
留三郎はハッとした。小さい頃に夕河に教えていた。迷わない様にするには草を結んで目印にしろ。
二人は結ばれた草を頼りに進んで行った。
忍術学園ではもはやパニックになっていた。しんべえ、は組は半べそになり、上級生は心配のあまりカリカリしている。
日が沈み夜、留三郎と長次が裏裏山に入り少し行った時、留三郎が足を止めた。
叫ぶ留三郎。その時、長次がまたもや何かを見つけた。
長次が指差した方へ進むと、そこは開けた場所…投げた後のナイフと羽織が落ちていた。留三郎と長次はその羽織に見覚えがあった。
その時、留三郎は岩が目に入った。崩れやすい岩だ。その一つの岩が割れている。まだ新しい。留三郎は顔面蒼白なりながらゆっくりと崖へ歩み寄る。
明かりを受け取り…留三郎は一歩、また一歩と崖に歩み寄る。
留三郎は明かりを崖下へ向けた。その瞬間。留三郎は固まった。そして長次も見た。崖下で赤子を抱えながら倒れている夕河を。
留三郎と長次は崖を滑りおり夕河へ歩み寄る。
取り乱す留三郎に長次が制止をかけ、夕河の脈を見る。
長次は猛スピードで忍術学園へ向かった。留三郎は夕河を背負った。
背負いながら山を下り、忍術学園に戻る途中。
留三郎は少しホッとして夕河を見る。
留三郎の言葉に夕河は思い出した。落ちたこと、そして、戦に巻き込まれていた事。
再び夕河の意識は途絶えた。留三郎は足早に裏山も通過する。そして、しばらくすると複数の明かりが見えた。他の六年生と五年生だ。
夕河はすぐに医務室へ運ばれた。奇跡的に命に別状は無いけど肋やら擦り傷やら酷くて一種のショック状態になっているだけ。夕河が怪我をして戻って来たと聞きは組全員が駆け足で飛んで来た。
新野先生と他の保健委員会メンバーが慌てて乱太郎達を抑えた。みんな夕河が寝る布団を囲む。
みんながあれこれ騒ぐ、土井先生と山田先生が制止をかける漸く場が収まった。
それから夕河が手当てしたのに目覚めなくなって五日間経つ。新野先生は見てくれたけど異常はなくて忍たま達は祈りながら活動していた。
五年生と六年生は夕河が襲われた現場に行ったら、辺り一面が焦げてもう森という文字では無い状態だった。
留三郎の顔は六年生ですら見た事の無い形相だったから宥めようとしたら後ろに気配があった。
そして読者の方を向く。
土井先生の言葉に朱夏は頷く。夕河を襲った張本人である朱夏がいてにやけていたので留三郎が凄まじい人相でドクツルタケに詰め寄った。
摑みかかる寸前で伊作が羽交い締めにして抑え込む。
朱夏の目的は破壊神眼持ちで超能力者なので籠城戦や戦に関わらせては面白く無いとのくだらない理由だったので留三郎は夕河を殺しかけて泣かせた報いで我慢の限界だった。
そう言ってその場に立ち去り、忍術学園は夕河を連れて籠城戦を挑む事になった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。