ザーザーと、雨が降り頻る中、俺は呆然と、家の前で立ち尽くして居た。
母が持っていた車は無く、家の中の電気も全て消えている。
あぁ、もう俺には居場所は無いのか。
_と半ば絶望感に浸っていた俺は、隣の家の扉が開くことに気付かなかったんだろう。
ビクッと身体が震える。
…これは気温の所為にしよう。
ぷりっつは勢いよく乱暴に玄関の扉を閉め、俺の方にやって来ては傘を翳す。
俺はその問いに答えることができなかった。
5分くらい無言の空間が時のみ進める中、沈黙を断ち切ったのはぷりっつの方。
あながち間違っては無いのだが…俺はまぁ、捨てられた部類に入ると思う。
俺は一言、「捨てられた」とだけ返した。
ぷりっつは少し考え込んだ後、パアッと顔を輝かせて大声で提案をしてくる。
俺は流されるまま、ぷりっつに付いて行った。
さっきよりも雨が強くなった中、ぷりっつの方を見る。俺より5cm程身長が高いぷりっつは、真っ直ぐと視線を前に向けている。
__ふと、ぷりっつの肩に目をやる。
すると、ぷりっつの肩が濡れていた。
俺は直ぐに傘から出て、ぷりっつが入れるように俺が横にズレる。
その行動に気がついたぷりっつは、俺に話しかけて来た。
ぷりっつは、これから知れると言う所で会話を止めてしまった。
それからぷりっつは頬を少し赤らめて歩いていた。
…寒いなら傘に入れば良いのに。
そんな事を考え、俺らはコンビニに入った。
コンビニに入って開口一番、俺はそう口にする。
いやぷりっつだって肩とか髪めっちゃ濡れてるんだよ?寒そうじゃん。
説得力ねぇなこいつ…などと思っていたら、視界には居ると思っていなかった人物が映り込んでいた。
その人物は、俺が声を掛けると直ぐに此方を振り向き、相槌を打つ。
成程、案内さんに似て五月蝿い人だな。(失礼)
三人で談笑して居たら、ドンッと誰かにぶつかった音がする。
…怖。
その人の顔を見て、恐怖で咄嗟に顔を伏せる。
……父さんが俺を殴ろうとする時、怒りを表した時に父さんが作るあの表情。
俺はあれがトラウマに成り得る程嫌だったんだ。
男はその二人の発言を聞き、ふらふら歩いて帰って行った。
俺は二人に飛びついて、「ありがとうございます」とだけ発言する。
案内さんは無言で頭を撫でてくれて、しょうじさんは「大丈夫、大丈夫」と俺の背中をさすってくれた。
…ぷりっつの事を今思い出した俺は、はっと我に帰り二人から離れる。
俺は二人にお辞儀をして、後ろに視線を回す。
ぷりっつが、怪訝な顔付きで俺を見つめていた。
急に発せられた言葉に対して、俺は何とも言えない気持ちがあった。
そう言うとぷりっつは会計レジの方に足を動かせた。
俺は急いでその後を追う。
ぷりっつは俺との目線を外して、カゴを店員に渡す。
先に案内さんとしょうじさんに改めてお礼をしようと思って、さっき二人が居た場所へと戻る。
二人はまだそこに佇んでいた。
と、俺は二人にまた一礼した。
すげぇなぁ…って思ってたら、ぷりっつの会計が終わるのを視界の隅で確認できた。
俺は二人に、「また学校で!」と一言言って、ぷりっつの方へと小走りで向かった。
だが、俺が走ってもぷりっつには3歩くらいの歩幅の空きがある。
いつもより歩くのが早い。
コンビニから出ると、ぷりっつは無言で俺に傘を渡して来た。
一瞬躊躇うも、俺は直ぐに傘を広げて、ぷりっつに差し出した。
俺の勘違いかよ…と内心呟く。
するとぷりっつは諦めて俺から傘を取って、俺の体を引っ張って無理矢理中傘に入れた。
なんか…引っ張られた時、ぷりっつの体当たっちゃったんだけど……。
もどかしい気持ちのまま、俺らは歩き出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。