ぴくとは授業中にも関わらず、私の隣で叫んだ。
今度はぴくとにも聞こえないぐらいのボリュームでそう言うと、それとほぼ同時に教室がまた笑いに包まれる。
さっきの私より冷やかし感が増した笑いだな〜w満足満足
なんて我ながら良い性格してるなと思っていると、ぴくとが小さな声で私に話し始める。
「P」とは、怪盗あなたの好きなアルファベット(P以外で)の協力者もとい相棒の名前。まぁ考えたのは私なんだが。
名前の元はプロデューサーのPだったり、本人の名前のイニシャルだったり...まぁ色々ある。
「P」という人は怪盗あなたの好きなアルファベット(P以外で)の協力者として世間にも知られており、怪盗あなたの好きなアルファベット(P以外で)のファン達は自らを「ピース(Ps)」と呼んだりもしている。
「P」もとい,ぴくとは楽しそうな顔をしてそう言った。
私はそのまま話を進めようとしたが先生に指名されたので、席を立って答えを言い、取り敢えず話は後にして授業に集中することにした。
チャイムが鳴り、やっと昼休みになる。
今日の午前の授業は全て移動しないといけなかったので、もうやり切った感がすごい。何ならもう帰りたい。
そう思いつつも、お腹が空いた私は素早く鞄からお弁当箱を取り出し、いつもお昼を食べる場所に一人で行こうとする。
そしたら、横からぴくとが話しかけてきた。
私達が二人で仲睦まじく?話していると、転校生の希が急に間に入ってきて、ビビりのぴくとはそれだけで驚き、大声で叫ぶ。
当然だが教室中の視線は私達に集まる。
静まり返った教室でぴくとは謝罪する。
その光景が私的にはとても面白く、堪えきれない笑いを精一杯抑える。
視界の端にいるゾムは、目元はパーカーで見えないものの、口はむすっとへの字になっていた。
ん...注目されるのはあんま好まないのかな...まぁ確かに正体がバレる可能性があるのだから当たり前か。危険な芽は摘んでおかないといけないしね
決めつけは良くないけど。と心の中で一言付けたしたりしてる間に段々と教室に話し声が戻ってきた。
私は堪えていた笑いを止め、口を開いた。
一応相手が我々怪盗団の一人という事で軽く警戒と 猫被り をしておく。
お前という言葉が指す人物は私かぴくとだが、ゾムが私の方を一直線に見ているあたり確実に私の方を指しているのだろう。
そう思い、私は遠慮がちに答える。
ぴくとの事は無視なんだな〜と思いつつ、考える素振りだけ見せて断ろうか、はたまた素直に受け入れ、一緒にお昼を食べるか悩んだ。
この希って人から我々怪盗団が持っている情報盗むのも良いけど...まぁ別に我々怪盗団の持ってる情報なんて迂闊なメンバーがいるおかげで簡単に調べられるしな〜。
やっぱり断るか
私は結論を出し、それを口にして伝えようとすると、同じクラスの女子が話に割り込んできた。
割り込んできた女子生徒はいつもはしない喋り方をしながら瞳孔全開でそう話し出した。
女子生徒はまだ誰も何も言ってないのに、話を勝手に進め続けている。
そんな女子生徒に対してぴくとは顔を思いっきり顰め、希は何故か殺意剥き出しで睨んでいる。それが自分に向けられたものだと気づかない女子生徒も女子生徒で凄いと思うが、この状況からどうにか逃げ出したい。
多少脚色されてるのは置いといて、蹴ったのは事実。私もやり過ぎだと思っていたし、こういうのは構うだけ無駄。
そう考えた私はぴくとの鞄と自分のお弁当を右手に持ち、左手でぴくとの手を握った後、そう言い放った。
ぴくとは無言のまま、私の手を強く握ってきたので肯定と受け取ってそのまま教室を出た。
教室を出る時ガタンと言う大きな音と悲鳴が聞こえたが、振り向くこともなく屋上へと足を進めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!