第10話

第九話:マジシャンの左腕
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2026/03/14 11:00 更新
あれから少しして、うちにもちょこちょこ顔を出していたブローカーと出会った。

そいつに薦められて、圧紘さんとともに加入したのは敵連合。
雄英高校に侵入しただのなんだので、少し名をあげている組織。

薦められたときにはどうかと思ったが、話を聞くところリーダーを務める奴はどうやら背骨を持っているように見えて、頷いた。

圧紘さんも頷いたから、それでいいのだろう。
それから数ヶ月、初仕事では雄英生を攫ったり、プロヒーローからの襲撃を受けたりもした。
まぁ、それもこれもなんとかなったから、なんの問題もない。

敵連合での生活にも慣れてきて、みんなとも名前を呼べる関係になった。
あなた
ねぇトガちゃん、どんな人が来ると思う?
トガヒミコ
アタシは素敵な人がいいのです
今は、トゥワイスくんが連れてくるという人を待っている。
トランクケースを広げて、廃コンテナの上に座って、相棒を弄りながらそんな話を始めた。

少しして、薄暗いこの倉庫に入ってきたのは、トゥワイスくんと、ペストマスクのようなものをつけた男。

指定敵団体“死穢八斎會”の若頭——敵予備軍のヤクザ者である。

そんな内容の煽りを圧紘さんが口にすれば、ヤクザは少し不機嫌な様子で立っている。

……まったく。これだから冗談の通じない堅物は。

そう思っていたところで、我々敵連合の一員であるマグ姉が消される。
皆が呆気に取られる中で、圧紘さんが飛び出した。
あなた
ミスター!?
ヤクザに触れる。
それでもなぜか、圧紘さんの“個性”が発動しなくて、左腕を吹き飛ばされた。
あなた
——圧紘さん!
慌てて駆け寄って、圧紘さんを後方へ移動させる。
弔くんが前に出たのを確認すれば、銃弾のような物が地面を跳ねたのが見えた。

……なるほど、ハナっから協力する気はさらさらない、と。

流石にこれはライン越え。
こちらが大人しくする理由はなくなった。
むしろ、迎撃する理由しかない。

相棒を抜き、銃弾の撃ち手がいるであろう方向に一発。
反射的に、ナイフも投げつけた。

くそ、動きがないから見えない。
手応えのないことに不安感を覚えつつも、横たわる圧紘さんの様子を見た。

呻き声を上げて、痛みに耐えている様子。
あなた
チッ、んっとにヤクザなんてのはロクな奴がいない
半分独り言のように呟きながら、圧紘さんの前に膝をつく。
幸いにもトランクケースを広げたままにしていたから、そこから道具を取り出して、応急処置に取り掛かる。

声だけで、腹が立って仕方がない。
もう喋るなよ。
そうどれだけ思ったところで、ヤクザは口を動かすのをやめない。
治崎廻
腕一本はまけてくれ
そう言って取り巻きとともに倉庫を出ていくヤクザに、一発撃ち込んでやろうかと思ったところで、圧紘さんの声が聞こえて踏みとどまる。

そうだ、今は圧紘さんを先に。

万が一のためにと、店から持ち出してきていてよかった。
止血帯やらなんやらと、とにかくできることは全部やる。

腕一本はまけてくれ? 
ふっざけんな、誰がまけてやるか! 

頭の奥でヤクザの言葉を反芻しながらも、圧紘さんを医者に受け渡した。

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