あれからまたしばらくして、面会に呼ばれた。
前と同じ部屋に入れられて、今度は誰かと待つ。
キイ、とアクリルの向こうの扉が開いて、警察官とともに人が入ってくる。
数週間ぶりだろうか、正確には覚えていないけれど、とにかくそれくらいの顔を見て、特にこれといった感情の起伏はなかった。
普段通りの軽口が働く。
イレイザーヘッドから返ってくることはなく、椅子を引く音が響いた。
軽口を叩くと、イレイザーヘッドは何も言わずに、茶封筒を警察官に渡す。
受け取った警察官も、何も言わずに少し離れた所のアクリルにつけられた鍵付きの扉を開けて、それをこちら側にいた刑務官に渡した。
しっかりと鍵を閉めた後、刑務官がそれを私の目の前に置く。
イレイザーヘッドにそう言われて、思わず立ち上がる。
急に立ち上がったことで咽せ、刑務官にも注意されたが、それに構わず言葉を続ける。
いつもよりも、間の抜けた声が出た。
茶封筒に、手を伸ばすまでに、少し時間がかかる。
触れて、持ち上げたところで、思った以上の重みを感じた。
閉じ紐を解いて、中身に触れれば、手慣れた感触。
そのままするりと引き出せば、一冊のノート。
ノートを開こうかと思ったところで留まり、また封筒に手を入れる。
ノートよりも手に染み込んだ感触。
私の、大切なバレッタと、大切なリボン。
圧紘さんからもらった、私の大切なもの。
私にしか価値のわからない、宝物。
それを目にした瞬間、胸の奥で何かが小さく鳴った。
イレイザーヘッドは一瞬だけ視線を逸らした。
ノートと、バレッタと、リボン。
机に並んだそれらは、世界を壊すにはあまりに小さい。
イレイザーヘッドはそれだけ言って、立ちあがる。
そこで、思い出したかのように口を開いた。
連合。
その言葉に、少しだけ息が詰まる。
……そっか、生きてるんだね。
イレイザーヘッドは背を向けた。
——キイ
扉が開く音がして、出ていく背中を見送った。
机のものに視線を落とす。
私の持ち物のほんの一部。
それだけのはずなのに、どこか自身の輪郭がはっきりとしたような気がした。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。