朝
空は澄み渡り、雲はゆっくりと流れていた
国全体のモンスター出現報告は、
ここ数日でさらに減少している
殲滅部隊の出動回数も減っていた
それは、本来なら喜ばしいこと
街は安定し、人々は安心して生活できている
だが――
戦いが減るということは、
緊張が減るということでもある
それは、戦士たちにとって新しい環境だった
金豚きょーは、基地の屋上に立っていた
黒翼は展開していない
ただ、静かに空を見上げている
風が髪を揺らす
彼の表情は落ち着いている
らっだぁが階段を上がってくる
短い返事
らっだぁは隣に腰を下ろす
しばらく、二人は黙って空を見る
らっだぁがぽつりと言う
金豚きょーは小さく息を吐く
少し笑うらっだぁ
そして続ける
その言葉に、金豚きょーはわずかに目を細める
同じだ
彼も感じていた
戦場の緊張が消え、静かな時間が増える
それは安全
だが同時に、身体と心の“居場所”が変わる
軽い訓練
模擬的な連携確認
黒翼も最小出力
金豚きょーは制御を重視する
みどりは姿を消し、コンタミは水で防御
レウクラウドは精神安定の補助を行う
らっだぁは全体のバランスを見ながら指示
戦闘は穏やか
衝撃もなく、破壊もない
完璧なチームワーク
訓練後、らっだぁが笑う
みどりがうなずく
レウクラウドも微笑む
コンタミは静かに水を整える
金豚きょーは空を見上げる
戦いがない
それは守られている証拠
だが――
彼の中で、少しだけ思考が深くなる。
全体会議
他グループも含めて状況報告
モンスター出現率:低下傾向
緊急任務:なし
レウクラウドが頷く
コンタミも同意
みどりは少し安心した表情
金豚きょーは資料を見ている
数字は安定
ストレス値も危険域ではない
だが彼は思う
“自分は、戦うことで安定していたのではないか?”
その考えは、まだ小さい
しかし消えない
夕方
軽い外周巡回
異常なし
モンスター反応ゼロ
森は静か
鳥の声だけ
らっだぁが腕を伸ばす
コンタミが微笑む
レウクラウドはメモを閉じる
みどりは周囲を確認
金豚きょーは、森の奥を見ていた
そこには何もない
それが正常
それでも――
胸の奥が、ほんの少しだけ落ち着かない
焦りではない
怒りでもない
説明できない違和感
彼は自分に問いかける
“俺の役目は果たせているか?”
すぐに否定する
現状は安定
チームは健全
世界も安定
問題はない
彼は冷静だ
判断力も落ちていない
能力制御も正常
食堂
談笑
らっだぁが冗談を言い、みんなが笑う
金豚きょーも会話に入る
ツッコミを入れる
笑う
外から見れば、理想のチーム
だが彼の笑いは、ほんの少しだけ静かだった
それは疲労ではない
「変化の少なさ」に対する、適応の途中段階
まだ危険ではない
まだ
夜
彼は再び屋上へ
黒翼を出す
闇と光の羽が月明かりを受ける
飛行
空を一周
風を感じる
彼は自分の動きを確認する
精度は高い
反応も正常
問題はない
降下
翼をしまう
深呼吸
静かに呟く
彼はまだ崩れていない
だが、
戦いのない時間が続くことで、
内側のバランスが少しずつ再構築され始めている
それは自然な変化
しかし、この世界では――
変化は、時にきっかけになる
ストレス値
らっだぁ:29
みどり:27
金豚きょー:41
レウクラウド:37
コンタミ:34











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。