第2話

始まり
1,240
2021/01/30 00:31

夏川あなた。


稲荷崎高校2年生。


高校1年で東京から兵庫に来たため、まだ関西弁は慣れず。


明るい茶髪を肩上で切りそろえ、前髪は眉らへんでぱっつんにしている。


茶色い大きな目が実は結構気に入っている。


ただ、丸顔なのはコンプレックス。


自分の顔が気に入らず、いつもマスク状態。


そのうちマスクも離せるかなーって思ってたんだけど…



気づけばマスク依存症になっていた。



そんな地味な私が、まさかの男子にお呼び出し。


相手は宮侑くん、同じ2年2組だ。



私はよく分からないけど、女子に相当モテるらしい。


そして、本人は女子が嫌い。


彼はバレー部で、サーブを打つときに喝采が耳に入るのが相当嫌なんだとか。



ま、噂だけど。





ってなわけで、現在私が居るのは校舎裏の木の下。


桜の花びらはすでに落ち、緑色の葉が夏を告げていた。



目の前にいるのは侑くん。


じっと意味もなくこちらを見つめている。



あなた「あの…?」


侑「お願いがあんねん」



私の声に被せるようにそれは告げられた。










侑「北さんと、交換ノートして欲しいねん」







……はい?





あなた「えっと、それは…」



侑「俺とサムと角名、バレー部やねんけど、まだ一度も北さんの裏を見たことがないんや。やから…」




あなた「私が交換ノートをして、彼の裏を探る、と…?」


侑「そのとーり」


あなた「でも、何で私…?き、北先輩って人も分かんないし…」


侑「大丈夫やって、きっかけは作る!やからお願い!」



ぱしんっと手を合わせ、さらに念を押してくる侑くん。


断りづらいなぁ…。




あなた「…良いよ。私がやる」


侑「ほんま!?ありがとうな、あなた!」



『ありがとう』って、標準語…。


私に分かる様に言ってくれたのかな?


関西弁好きだし、関西弁で言ってもらっても分かるけど…。


まぁ、優しさとして受け取っておこう。



あなた「でも、何で私を選んだのかだけは知りたいな」


侑「んー…媚びひんから?」


…ほぇ?


侑「女はやかましい奴ばっかりや思てたけど、お前はそうやなかったからな」


へぇ、たしかに、私はあまり喋らないほう、かも…?



本当は喋るのが大好きなことは、内緒ね。


あなた「そっかぁ…ちょっと謎だけど、良いよ!北先輩のこと知らないから、ノートは侑くんに渡すけど」


侑「それで全然おっけーや!ほんまにありがとうな!」



癒しの笑顔を向けられると、悪い気はしない。



私も釣られて笑顔になる。



あなた「私頑張るね!じゃーね!侑くん!」


私はバイバーイと手を振りながらその場を去った。












侑「あかん、何で俺が惚れなあかんねん…///」












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