夏川あなた。
稲荷崎高校2年生。
高校1年で東京から兵庫に来たため、まだ関西弁は慣れず。
明るい茶髪を肩上で切りそろえ、前髪は眉らへんでぱっつんにしている。
茶色い大きな目が実は結構気に入っている。
ただ、丸顔なのはコンプレックス。
自分の顔が気に入らず、いつもマスク状態。
そのうちマスクも離せるかなーって思ってたんだけど…
気づけばマスク依存症になっていた。
そんな地味な私が、まさかの男子にお呼び出し。
相手は宮侑くん、同じ2年2組だ。
私はよく分からないけど、女子に相当モテるらしい。
そして、本人は女子が嫌い。
彼はバレー部で、サーブを打つときに喝采が耳に入るのが相当嫌なんだとか。
ま、噂だけど。
ってなわけで、現在私が居るのは校舎裏の木の下。
桜の花びらはすでに落ち、緑色の葉が夏を告げていた。
目の前にいるのは侑くん。
じっと意味もなくこちらを見つめている。
あなた「あの…?」
侑「お願いがあんねん」
私の声に被せるようにそれは告げられた。
侑「北さんと、交換ノートして欲しいねん」
……はい?
あなた「えっと、それは…」
侑「俺とサムと角名、バレー部やねんけど、まだ一度も北さんの裏を見たことがないんや。やから…」
あなた「私が交換ノートをして、彼の裏を探る、と…?」
侑「そのとーり」
あなた「でも、何で私…?き、北先輩って人も分かんないし…」
侑「大丈夫やって、きっかけは作る!やからお願い!」
ぱしんっと手を合わせ、さらに念を押してくる侑くん。
断りづらいなぁ…。
あなた「…良いよ。私がやる」
侑「ほんま!?ありがとうな、あなた!」
『ありがとう』って、標準語…。
私に分かる様に言ってくれたのかな?
関西弁好きだし、関西弁で言ってもらっても分かるけど…。
まぁ、優しさとして受け取っておこう。
あなた「でも、何で私を選んだのかだけは知りたいな」
侑「んー…媚びひんから?」
…ほぇ?
侑「女はやかましい奴ばっかりや思てたけど、お前はそうやなかったからな」
へぇ、たしかに、私はあまり喋らないほう、かも…?
本当は喋るのが大好きなことは、内緒ね。
あなた「そっかぁ…ちょっと謎だけど、良いよ!北先輩のこと知らないから、ノートは侑くんに渡すけど」
侑「それで全然おっけーや!ほんまにありがとうな!」
癒しの笑顔を向けられると、悪い気はしない。
私も釣られて笑顔になる。
あなた「私頑張るね!じゃーね!侑くん!」
私はバイバーイと手を振りながらその場を去った。
侑「あかん、何で俺が惚れなあかんねん…///」
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読んでくださりありがとうございました!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。