冷たい風に背中を押される。
サラリーマンや学生とすれ違う。
勿論、私には気づかない。
私が…見えない。
それが、当たり前なのに、
ね。
思えばあの日が始まりだった。
信号だって青だった。
左右確認もした。
なのに
なのに
なんで
なんでよ
今でも私を引いたあの人は、
のうのうと生きている。
どうして?
自然と足取りが、早くなる。
だんだん早くなる。
だんだん下を向く。
だんだん…
見えなくなる。
未来が、
見えなくなる。
切なくバラバラ散る。
私の何か。
曲がり角を曲がろうとした時_
"どすっ"
思い音を立てて私は誰かとぶつかり、尻餅をつく。
それと同時に聞きなれた声。
ゆっくりと顔を上げる。
驚きで、声が出ない。
私は、小さく頷く。
それを見たじんたんは、"ニカッ"と笑う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。