第58話

先生
77,013
2018/10/15 11:10
先生の唇が私の唇に触れる。
みく
ん……っ……
もう、どうでもいいや。

私は自分から先生の口に舌を入れる。
先生の温かい口に私の舌がとろける。

ずっと、大好きだった。

世界一気持ちの良かった、先生とのキス。

だけど、今は……
みく
んんっ……
胸の奥が真っ暗だよ。

体はどこも痛くないの。

ただ、胸と喉の奥が砂利をかんだように気持ち悪い。

涙が流れる。

それでも私は気づいていないふりをして、キスを続ける。

それしか、私にはないの。

肉体で与えられる愛にしがみつく。

それが『友達』だと思ってた。

それが愛だと思ってた。







海人に出会う前は。








みく
んっ……ごめんなさい
私は先生の唇から唇をはなす。

先生の胸に手を当て、先生を軽く押し突き放す。

一瞬、手に先生の鼓動を感じた。

それでも、私は続ける。
みく
もう、この関係はやめさせてください。
先生
何、急に勝手に。
みく
勝手だとは思ってます。
本当にごめんなさい。
先生とキスしてるのに。

さっきは、さくやとシたのに。



私の心には一人しかいないの。



夕日に染まる教室で手を握ってくれた

一緒に笑いながら帰ってくれた

私の初めての友達になってくれた

私を……抱きしめてくれた

海人
『大丈夫』
海人
『変われるよ』
海人
『みく』
今でも、すぐ横にいるように声が聞こえる。


私の傍にいてくれた。


深い青色の髪をした、

澄んだ黄色の目をした、









みく
海人……
涙が溢れる。

海人、海人……。

海人……会いたいよ。

初めて私に優しくしてくれた。

初めて私を応援してくれた。

嬉しかったの。

私の世界を変えてくれたのは海人だよ。

早く、私のところに来て。

先生
お前の都合なんて知らないし。
先生に腕を掴まれる。

強い。

大人の男の力に、逆らえるはずない。

やめて……。

先生が近づいてくる。

ダメ……やめて……

やめて‼
















海人
みく‼
教室のドアが勢いよく開く。



……やっぱり来てくれた。
みく
海人……

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