第67話

帰ろう?
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2023/10/19 01:23
そうだ……何甘えてんだ私は…
頬を生暖かいものが伝う。
みんなは…私のことなんか…
少しでも…一瞬でも…
戻りたいって思った。
最低だ…私…
「俺は…戻りません…」
及川「っ!え…………何かあった?」
一瞬驚く先輩だったが、途端、真剣な目に変わる。
そんな先輩に動揺してつい目を逸らす。
「っ、いえ…何も無いです。大丈夫です。」
及川「嘘はダメだよ?及川さんはなんでもお見通しなんだから!…………今日、自販機の近くで会った時、なんかあったでしょ。」
いつもと違う先輩に戸惑ってしまう。
いつもはもっと…おちゃらけてて頼りない感じで、岩泉先輩に怒られてるのに……
今日の及川先輩はなんか……
なんて言うか…
怖い。
目が本気だ。
「…………俺、今日、ずっと失敗ばっかで…みんなに迷惑かけて、頼りなくて、マネージャー失格だなって…そんな時、やっぱりマネージャーは女子じゃないと気分とかモチベとか上がんないって声が聞こえて…」
ダメだ…自分で喋ってて、辛くなる…
私って、こんなに弱かったんだ…
「俺は……俺は……必要とされてないんじゃないかって…俺の存在は迷惑なんじゃないかって…だから、俺は…」
及川「馬鹿っ!!」
ぺちっ!!
「っ、?!」
ずっと静かに何も言わずに私の話を聞いてくれていた先輩が急に私の頬を両手でパチンと軽く叩く。
こんなこと…初めてだった。
及川「頼りなくてマネージャー失格?男だと気分とかモチベ上がんない?あなたちゃんは必要ない?あなたちゃんは迷惑?………………あなたちゃんは、俺ら部員の1人でもそんなこと言ってたの聞いたわけ?」
ビクッ!!
「ぁ……え……きいて……ない、です……」
及川先輩がこんなに本気で怒ってるとこ……初めて見た…
及川「俺らは誰にでも優しい優男軍団じゃない!!頼りなくて迷惑で必要ないやつに笑いかけないし、口利いたりしない!!他の誰でもないあなたちゃんだから……君を大切にしてきたんだよ…?あなたちゃんはそうじゃないの…?」
っ、先輩……
そんなこと…
及川「あなたちゃんは…俺達のこと、嫌い?」
そんなこと……!!
「嫌いなわけないじゃないですか!!好きです!!大好きです!!俺もみんなとずっと一緒に居たい!!青城バレー部に戻りたい!!う…ゔぅ…」
涙が止まらない。
溢れ出して、治まらない。
スッ…
「っ、!!」
及川先輩が静かに微笑んで私に手を差し伸べる。
及川「もう一度言うよ?あなたちゃん…帰ろう?」
「…………はいっ!!」
私は、差し出された彼の手を取った____。

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