ちんちくりんの後輩が
またくだらないお節介を提案してきた。
すげぇ嫌な予感しかしねえ……。
しーなは俺の制止も聞かず
スカートのポケットから小さなメモ帳を取り出した。
楽しそうにそれを見せつけてくるしーなの笑顔に
少し戸惑う。
メモ帳には小さな丸っこい字。
しーなのくせに、可愛い字しやがって。
か、可愛い……だと?
この俺が女に対して、可愛い……!?
更生計画というより
女性恐怖症の克服リストじゃねーか。
思わず言葉が零れた。
カッと頬に熱がこもる。
なんだか恥ずかしくなって目をそらす。
自分から思ってたより低い声が出た。
口ごもるちんちくりんに胸がざわついて
何だかイライラしてきた。
なんでイラついてんのか自分でもわからねえ。
振り向くとしーなとばっちり目があった。
小動物みたいな丸い瞳が
俺をじっと見つめてきてまた頬が熱くなる。
俺、熱でもあんのか?
なんでだ……?
何故かすごくイライラするし恥ずかしいし
俺は咄嗟にしーなに背を向けた。
なぜかクズな言葉がポロポロと漏れる。
おい止まれ、俺の口。
本当はこんなこと言いたくねえってのに……。
振り向くと、しーなは俺を睨んでいた。
小さく絞り出した声は届かず
しーなは俺をおいて走り去っていった。
俺は結局つまらねー殻に閉じこもるクズ男だ。
こんな自分は嫌いだ。
でも俺はクズでいる方が楽なんだ。
むしゃくしゃして俺は乱暴に髪を掻き乱した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。