違う、
違う、
ボクはあんなヤブ医者嫌いだ
大嫌い。
なんでこんな悩んでんだろ
選択肢はひとつしかないのに
好きなんかじゃないのに
好きなんかじゃない
好きなんかじゃ———
頭を抱えて悩んでいる様子の赤さんに声をかければ、悲鳴のような怒号が響く。
ドクターは青さんと一緒に怪我の応急処置に行ってしまったし、ウサギさんについて行ってヒカリもいない。キノコだって花畑へと遊びに行ってしまった。ここにいるのは患者さんと赤さんと付添人さんと俺だけ。
バカだな、ボク。
心のどっかじゃわかってるはずなのに。
相談すりゃいいものを、こんなに拗らせて捩らせて。
脳足りてねえんだな、きっと。
今日の夜、あのヤブ医者が帰ってきたら外へ友達を探しに行く。
正直、まともに探せる気がしない。
ガラ、なんて音を立てて、戻ってきたのはあの黄色。
手足を真っ赤に染めて帰ってきたヤブ医者は、だいぶ疲れきった様子で水道へと歩いて行った。
ほら、またいらない事訊いて。
ただ、そんな会話をしただけ。
手足が自分と同じような色に濡れたその姿を見るだけで、頬に熱が溜まる。
はぁ
馬鹿らしい。
なんでこんなコイツは冷静なんだ。
腹立たしい。
小さく返事をしたボクとは目も合わせず、ヤブ医者はタオルで体についた血を拭いていた。
2人きりになるのは、無理で。
正気でいられる気がしなかった。
少しだけ残念そうな声で、キノコはふわふわとボクの周りを飛ぶ。
大切な人から離れたくないのはわかってるけど、ボクは自己中なもんだから、それを理解した上で彼を誘った。
そう、ヤブ医者が言えば、少ししてからキノコが答えた。
悲しい奴。
普通に哀れみ。
その時、ふと後ろに気配を感じた。
なんだ
なんか
懐かしい感じ。
誰かに強く呼ばれてるような気がして、気配のした方へと足を運んだ。
走れ、走れ
速く、速く。
そこにいたのは、見慣れたあの風景
あの花畑でもう一度、
追いついてきたヤブ医者達も、多分同じ光景を見てる。
その場には、昔からある花畑に佇むひとりの影....幻影かもしれないけれど、実体はないかもしてないけれど、それでも脳裏に焼きついたあの光景。
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界 : 植物界
門 : 被子植物門
網 : 双子葉植物網
目 : スミレ目
科 : シュウカイドウ科
属 : シュウカイドウ属
種 : シュウカイドウ
【学名】
Begonia grandis Dryand.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。