しばらく沈黙が続き、それを破ったのは赤さん本人だった。
それは今その顔で言うと意味合いが変わってくるだろうとも思ったが、ドクターはそんなに話の通じない人ではないので問題はないようだ。
その時、ガラッなんて音が聞こえて、扉が開いた。
そうドクターが呟いて、俺とドクター2人揃って扉に目をやった。
慌てた様子で医務室に入ってきたその人。名は名乗らなかったが、それ以前に彼が連れてきた患者さんの容態が酷いので、そちらに集中することにした。
そう言われて、とりあえず包帯を付近に強く巻いて止血を試みた。
意識はほぼないのか、少々顔を歪める程度で特に反応はない。
しばらくして戻ってきたドクターが彼に点滴と止血剤打ち、しばらくしてから彼は目を覚ました。
まだぼんやりとしているのだろうか、患者さんは少々ふわっとした様子で微笑んだ。
そう訊かれて、患者さんはぎくりとした顔をした。彼は何かを隠すよう言葉を濁す。
ふわふわと柔らかな笑顔で言う付添人さんは、どこか冷たい雰囲気を漂わせていて。
そう言ったドクターは、本を開きページを捲る。
先程のことがあったからか、2人の間には少し距離があった。
ウサギは席に座り、上手く力の入らない腕で本を開く。
顔を歪めた赤さんは、患者さんの付添人さんと話しているドクターに声をかけた。
「強いて言うなら内臓ではないがお前のゲノムサイズは〜」なんて適当に話すドクターを尻目に、俺は患者さんへと声をかけた。
「その言い方をやめろ」と本のページを捲りながら注意をしたドクターの元へ、「何読んでんの」と向かう青さんは、内容が分からなかったのかドクターの読んでいる本を覗き込んで顔を歪めていた。
あはは、なんて朗らかで柔らかい笑顔を浮かべながら言う付添人さん。「食べた」。その言葉に、嫌な予感がした。
大丈夫じゃないんだよなぁなんて思いながら彼の包帯に巻かれた短い腕を見る。多分、失礼だけど顔は自然に歪んでいたと思う。
「不味そう」なんて言いながら、苦虫を噛んだような顔をした赤さんは、解剖学を読んでいるウサギさんの方へと歩いて行く。
彼は刺し傷に巻かれた包帯を少し剥がして、血の滲んだそれを眺める。もちろん遺体を解剖したものなので痛みなんてないのだが。
そう呟くように言った赤さんに、付添人さんは笑いかけた。
「引くわァ」とわざとらしく苦笑いを浮かべる赤さんは、付添人さんから距離を置いた。
付添人さんの、黒っぽい赤紫色の瞳が赤さんを捉えている。
あまり広くない部屋の端で、できるだけ付添人さんと距離をとり、赤さんはGrrと唸っている。
青さんに注意されるが、赤さんは唸るのを止めなかった。
赤さんとは対照的に、とても落ち着いたら様子の患者さん。そんな彼のそばに寄った付添人さんは、何か呟くように小さな声で告げた。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Scutellaria_indica_4.JPG
界 : 植物界
階級なし : 被子植物
階級なし : 真正双子葉類
階級なし : キク上類
階級なし : キク類
階級無し : シソ類
目 : シソ目
科 :シソ科
亜科 : タツナミソウ亜科
属 : タツナミソウ属
種 : タツナミソウ
学名 【Scutellaria indica】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:W_rengyou5041.jpg
界 : 植物界
階級なし : 被子植物
階級なし : 真正双子葉類
階級なし : コア真性双子葉類
階級なし : キク類
階級なし : 真正キク類I
目 : シソ目
科 :モクセイ科
連 : Forsythieae
属 :レンギョウ属
学名 【Forsythia】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。