第11話

10 レンギョウ
32
2024/03/30 11:35
真っ先に口を開いたのは、キノコ。
キノコ
キノコ
そうですね、貴方様の御友人が呪術によって亡くなっているのであれば、どこかにいる可能性はあると存じます。
赤
ほんとっ!?もう何十年も前だけど大丈夫かなっ?
「何十年も」なんて言う割には精神年齢が幼いが、あまり触れないでおこう。キノコの方向へ身を乗り出して、葉をぶんぶんと騒がしく揺らす赤色に、白が告げる。
白
何十年もって...貴方何歳ですか
そう白が訊けば、赤は「う〜ん」なんて唸りながら、パッと閃いたかのように顔を明るくした。
赤
今の体では18!昔の体トータルで何百回も繰り返してるから....何歳だろ?とりあえず今は18!多分!
彼が話していた「友達」と別れたのは生まれて間もない頃で、その友達と死別?してから死に戻りを身につけた。と言うことは、友人と別れたのは1回目の命の時だ。もう何百年前なのかも分からない。
黄
そんな何百年も会ってないような友達の顔とか覚えてんのか?第一、そんなに霊は生きていられるのか?
「あぁ、その点は」とキノコが捕捉してくれた。どうやら、ある一定の目的や願いがある霊に関しては成仏や消えたりせずに生き続けられる?らしい。
赤
じゃあ確定じゃん!生きてるよ!!
黄
いや死んではいるから
赤
うるせ!!
叫んだのが響いたようで、赤は少し前にキノコに刺された腹部を押さえた。
赤
くっそ...痛かった...
その時、ガラ、なんて音と共に更にうるさい奴が帰ってきた。
青
我帰宅!!!!!!
黄
うるせえぞ
白
元気ですね...
「どこに行っていた?」なんて訊けば、「ん、ちーっと人手不足に突っ込んでた」なんて疲労混じりの声で返される。
青
ん、まぁ黄色たんが生きててよかったワ♡
黄
見苦しいな。気色悪い。
青
そんな言うかね,..
「仲が良いことで」と笑うキノコ。彼は青の前に浮くと、軽く自己紹介をした。
キノコ
キノコ
お初にお目にかかります。私キノコと申します
礼儀はわきまえているのか、深々と礼をしたキノコ。かしこまった事が苦手な青は「頭あげて?」としょぼしょぼした顔で焦っている。
ウサギ
ウサギ
それにしても、皆さん何故そんな呪術に関係があるのですか?
こてんと首を傾けたウサギは、これはこれで不気味な生気のない笑顔を浮かべていた。彼女はいつもそうだ。笑顔は笑顔でも、不思議な、どこか光のない笑顔を浮かべる。瞳はキラキラと金色に輝いているのに。
黄
...こうしてみると、お前ら兄妹みたいだな
ふと、口から漏れた。
黄
あぁ、ごめん。関係ない
そう発言を取り消せば、ウサギと赤は見つめあった。
赤
似てる..かぁ...?
ウサギ
ウサギ
似てるのですかね
そうじゃなくて、雰囲気が。そう言おうとも思ったが、なんとなく顔面も似てなくはない気がする。
相変わらず見つめ合っている二人は、「おん。似てないわ」なんて赤が言うのとほぼ同時に二人揃って首の向きを変えた。
赤
んでさァ、ヒカリ、だっけ?さっきから何してんのよ
ヒカリは相変わらずウサギの周りを楽しげに飛び回っている。足取り?こそゆらゆらとしたマイペースなものであるが、それでも楽しいという感情は伝わってくる。
変人が多いな、この医務室は。
その時、ふとノック音が聞こえた。
黄
あいよ
出入り口から1番席が近かったので、俺が扉を開ける。
モブ
先生ぇ、足首ひねったぁ
そこに立っていたのは、よくここに来るヤンチャな少年。ニカニカと笑っているが、医務室に迎え入れた時にはびっこを引いて入ってくる。椅子に座らせ、様子を見ればどうやら軽く捻挫をしているようだ。
黄
馬鹿だな。捻挫だよ。怪我は軽いから湿布して少し休んで行くだけでいいぜ
「はァ〜い!」なんて元気に返事をして、湿布を貼った後は椅子の上に座ったまま足を揺らしながら会話を始めた。悪化するから足を動かすなと言えば、再び元気な返事をして少年は大人しくする。少年は、真っ先にウサギに声をかけた。
モブ
ウサギねえ久しぶり!
ウサギ
ウサギ
お久しぶりなのです
きゃっきゃと騒ぐ少年。白は少年に茶菓子を出して、話に混ざり時折笑う。
そして、少年の視線は赤へと向かう。
モブ
姉ちゃん誰?初めて来たの?
赤
にいちゃんだぜクソガキ
黄
おい口汚ねえぞ
ぱっちりとした緑色の瞳をジトっと半分閉じながら少年の頭をぐりぐりと押す様を見ると、確かにこいつは男なんだなと思った。ガキ同士仲は悪くないようだが。
少年は、3時間ほどキャッキャと騒いだ。昼になる頃には足首が痛くなくなってきたと言うので代えの湿布を何枚か渡して別れを告げる。
赤
...お前、ヤブ医者なんだな
ふと、少年が帰った後で赤にそう言われた。
黄
は?何言ってんだお前
そう俺が返せば、青がコソコソと赤に耳打ちで言った。
青
やめとけ、骨砕かれるぞ
黄
おい
赤
うっわーーー怖ぁ
そんな会話をしていれば、キノコが少々元気なさげにカーテンの隙間から顔を出した。
白
やぁ
キノコ
キノコ
...帰りました?
少年がいないかどうかを確かめて、そろっと出てきた彼。どうしたのかと訊くと、いつもの調子に戻ったキノコは口を開いた。
キノコ
キノコ
私どうも子供が苦手にございましてね...
普段の上品な笑顔に似合わないようなしょぼくれた顔をするキノコは白に慰められていた。
赤
んで、話戻すけど
パン、と手を鳴らして、赤色は俺を指差した。
赤
アンタ、ボクと付き合えよ
キリッとした顔。何を言っているんだと思った。
それで、俺は気づいた。
顔に熱が溜まる。
場はしんと静まり返っている。そんな中、「あらあら」とキノコが笑えば、赤はひとつ提案を持ちかけてきた。
赤
ボクが友達に再会するのに付き合ってくれたら、ボクはアンタのいうことなんでも聞く。
そこまで言われてやっと気がついた。
俺はひとつ勘違いをしていたようだ。
赤
ン、なんだその顔。そんな嫌か
「そうじゃない」と否定をすれば、再び「あらあら」と背後で笑い声。
黄
おいやめろ笑うな
顔を隠しながらソイツの方へと向けば、「なになに」と前の方で声が聞こえる。
キノコと白に笑われて、内心
その後、コソコソとした喋り声が聞こえ、前の方がスッと静かになった。
黄
ふと前へと向き直れば、顔を赤くして俯く赤色。
2、3秒ほどして、彼は口を開いた。
赤
キモいこと考えてんじゃねえぞ。とりあえず今日の夜から友達探すから
俺も赤も、目を合わせようとはしなかった。
白
...マジですか、ドクター?
黄
....黙れ
もうその場は、会話なんてできる状態ではなかった。
おちび
おちび
とうとうこいつら自覚しましたね
おちび
おちび
想ってる素振りはほぼないのにこうやって急に自覚するんだ
おちび
おちび
バカなんじゃないのかな!!
おちび
おちび
しゅき♡

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