大きめのため息を吐きながらテーブルを拭いていく。
今日はお客さんの入りが
あまり良くないため、店長と2人きりが多い。
悶々と考え事をしては、
今日も今日とてため息は増えていくばかり。
原因はまぁ、ひとつしかないんだけど。
チリリン…
不自然じゃなかったかな。
ちゃんと、話せてたかな。
ため息の原因となる彼がご来店しては、
普通は嬉しいはずなのに
なんだか今日は嬉しくない。
布巾をぎゅっと握り締めて、
私は厨房に戻る。
店長と目が合うと、
事情を知ってる店長は私の頭を
ポンポンと撫でてくれた。
厨房から見える彼は、
相変わらずノートPCと睨めっこ。
その姿すらもかっこよく見える。
日当たりのいい席に座る彼は
太陽すらも味方にしてるくらい輝いてて、
見惚れてしまう。
そう、彼はずるい。
私の心を奪っていったずるい人。
好き___
この気持ちが届くはずもないのに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。