前の話
一覧へ
次の話

第2話

第1話 家族
173
2026/02/08 00:42 更新



『おじいちゃんはよく、そらとおはなししてるよね』


昔、あなたの一人称 (例:私、僕、俺)が祖父に言ったこと。


『いつもたのしそう!
なんのおはなししてるの?』



祖父の家に行くたびに、同じ質問をした気がする。



答えてくれることはなかったけれど、



「ハハ。そうがぁ、楽すそうに見えるがぁ。」



そう言って快活に、どこか照れ臭そうに笑った。

笑って、笑って、どうしてそんなに笑うのかな、

っていうくらい笑ったあと、また空を見上げる。



シワの深い丸くて優しい目を、
半月型に細めて。


月の満ち欠けに似ていたなぁ。
だからあなたの一人称 (例:私、僕、俺)は夜が好きなのかもしれない。


海が好きな理由も、きっと祖父の家が東北の、

潮風香る沿岸部にあったからだろう。


庭に1本の大きな松の木があって、
縁側近くにはいつも何かしらの魚が干してある。

昔ながらの大きな日本家屋に、
祖父は1人で住んでいた。





祖父の存在は、
あなたの一人称 (例:私、僕、俺)にとってすごく大きい。



目元がお父さんに似ているね、なんて誰かに言われると
凄く嬉しかった。
(東北の祖父は父方だったし、
父も祖父に似ているから)



もちろん今言われても嬉しいけれど……

最近は誰にも言われなくなっちゃったな。































『よっこいしょ……っと。』


ある夏の昼下がり。
慣れない木の匂い、積まれたダンボール。




「あなたー!ちょっと来てー!!」


1階から、母の声がする。


『はーい?』


手に持っていた荷物を置き、
小走りで部屋を出て階段を駆け降りる。


「無い、ここにも無い……」


リビングには、物をあちこち散乱させながら、

何かを探す母の姿。


『どうしたのお母さん。
いつも通り変だよ。』


「テレビのリモコンが無いのよ!
コンセント類と一緒に置いておいたのに…」



そう言って頭を抱える。

あなたの一人称 (例:私、僕、俺)と母の間に、
どんよりとした空気。


『大丈夫だって。
どうせすぐに見つかるよ。』


「いま何時?」


『もうすぐ15時だよ』



「あらぁ、ならおやつタイムに
しましょうか♪」


かと思えばいきなり立ち上がり、
まだ寂しいキッチンへ向かう。

本当に、お母さんは気分屋だ。

まるで何かに取り憑かれてるんじゃないか、
ってぐらいに。



『はぁ......』



このままのペースだと日が暮れてしまう。




「こーら、お行儀悪いわよ。」



レモンティーをがぶ飲みし、
口の中にはシフォンケーキ。


まだ玄関に残っていた荷物を抱え、2階へと戻った。

プリ小説オーディオドラマ