『おじいちゃんはよく、そらとおはなししてるよね』
昔、あなたの一人称 (例:私、僕、俺)が祖父に言ったこと。
『いつもたのしそう!
なんのおはなししてるの?』
祖父の家に行くたびに、同じ質問をした気がする。
答えてくれることはなかったけれど、
「ハハ。そうがぁ、楽すそうに見えるがぁ。」
そう言って快活に、どこか照れ臭そうに笑った。
笑って、笑って、どうしてそんなに笑うのかな、
っていうくらい笑ったあと、また空を見上げる。
シワの深い丸くて優しい目を、
半月型に細めて。
月の満ち欠けに似ていたなぁ。
だからあなたの一人称 (例:私、僕、俺)は夜が好きなのかもしれない。
海が好きな理由も、きっと祖父の家が東北の、
潮風香る沿岸部にあったからだろう。
庭に1本の大きな松の木があって、
縁側近くにはいつも何かしらの魚が干してある。
昔ながらの大きな日本家屋に、
祖父は1人で住んでいた。
祖父の存在は、
あなたの一人称 (例:私、僕、俺)にとってすごく大きい。
目元がお父さんに似ているね、なんて誰かに言われると
凄く嬉しかった。
(東北の祖父は父方だったし、
父も祖父に似ているから)
もちろん今言われても嬉しいけれど……
最近は誰にも言われなくなっちゃったな。
『よっこいしょ……っと。』
ある夏の昼下がり。
慣れない木の匂い、積まれたダンボール。
「あなたー!ちょっと来てー!!」
1階から、母の声がする。
『はーい?』
手に持っていた荷物を置き、
小走りで部屋を出て階段を駆け降りる。
「無い、ここにも無い……」
リビングには、物をあちこち散乱させながら、
何かを探す母の姿。
『どうしたのお母さん。
いつも通り変だよ。』
「テレビのリモコンが無いのよ!
コンセント類と一緒に置いておいたのに…」
そう言って頭を抱える。
あなたの一人称 (例:私、僕、俺)と母の間に、
どんよりとした空気。
『大丈夫だって。
どうせすぐに見つかるよ。』
「いま何時?」
『もうすぐ15時だよ』
「あらぁ、ならおやつタイムに
しましょうか♪」
かと思えばいきなり立ち上がり、
まだ寂しいキッチンへ向かう。
本当に、お母さんは気分屋だ。
まるで何かに取り憑かれてるんじゃないか、
ってぐらいに。
『はぁ......』
このままのペースだと日が暮れてしまう。
「こーら、お行儀悪いわよ。」
レモンティーをがぶ飲みし、
口の中にはシフォンケーキ。
まだ玄関に残っていた荷物を抱え、2階へと戻った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。