マンションの前まで送ってもらい、
一人たたずむ。
もしかして、龍友、いるかもしれない…!
会えるかもしれない。
そう考えてたら1歩が踏み出せない。
会ったらなんて言えばいいかわかんない。
私の家の前を通ったってことは
私と同じ階に住んでいるということ…か。
勇気をだしてエレベーターを押す。
10階。
慣れた手つきでボタンを押す。
腕時計を見るともう9時半を回ってて
早く寝なきゃ、と目標を立てる。
" 1階です "
その合図と共に開いたドアには
龍友がヘッドホンをしながらなにやら
ランニングでもするかのような
服装で乗ってて
私の声は聞こえる訳もなく、
私のこと知らないみたいに出ていった。
避けられてる…?
なんで?
いつまでも引きずる私に呆れた?
エレベーターに乗ってからもボタンを押すのを忘れてて
ドアは閉まらない。
慌てて押すと9を押してしまって
何やってんだろ、って反省。
私の中では龍友という存在はとても大きい。
だから
いくら、何年も会ってないからって
私の思いは変わらない。
まだ、、好きだから。
いつの間にか涙が零れてて
あの頃から泣く理由は変わってない。
部屋に着いてからも
何も手につけない。
我慢して、動かそうとするけど…
やっぱ、龍友が気になる。
どうしても…
どうしても…
大きなため息。
.
am 7:00
朝が来ても心のだるさは変わらない。
今日はちゃんと起きてよう。
寝ないように。
紅茶を用意して飲む。
.
あっ、そうだった。
店長に聞かれてたんだ。
普段は話さない店長がこうして前のめりで
聞いてくるなんて初めて。
以外にも私の恋愛話を頷いて聞いてくれた。
はぁ、龍友、どうしちゃったの…
私のこと忘れた?
カラー剤を揃えながら店長は言った。
店長…
話さなきゃわかんないもんだね。
人って。
隣で微笑む店長。
やばい、恋愛のスペシャリストに出会ったかも。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。