雨月。俺の名前は月が見えない雨が降った日に生まれたからという酷い付け方をされたわけではない。雨の日でも皆の悲しく辛い気持ちも月のように少しでも明るく照らせるような子になりなさいと言う意味で付けられた、らしい。
けど人を照らした覚えがない。
元から友達が少ない方だった。話に乗って皆と盛り上がるようなノリを持っていないし、2人か3人で静かにたわいのない話をして過ごす方が好きだ。授業中だってコソコソ先生の目を盗んで話をして楽しむより将来のためを考えてノートをとる方がいい。皆と少し考え方が違っていた。
中学、高校、ずっと静かに過ごしていて、大学生になってからもまた人とは違う考え方で過ごすんだなと思っいた。
–あいつに出会うまでは–
「ね〜、君いっつもここにいるけど、寂しくないの?」
俺の放課後の友達は図書館だった。自分の好きなことについての本がすぐ見れるし、何よりとても静かで落ち着く。俺の特等席は窓際の風通しの良い隅の机。
「ん、静かな方が好きなんだよ、ゆっくり自分の考えを考えて過ごすのが好きだから」
「…もしかして、皆と盛り上がるより、静かに過ごしていたいし、集中したい時は真面目にやりたいとかって考え?」
「そうそう、正解」
「へぇ〜、俺と同じ考えの人いるなんて。俺は楓馬、子羊楓馬、1年」
「っ…俺も考え同じ人初めて。…夜天雨月、変わった名前でしょ。俺も1年」
これが俺たちの出会いだった。考え方が同じという人が初めてだったこともあり、すぐに意気投合した。日中は別行動だけど、放課後は図書館でたわいのない話をする。そんな日々を過ごしていたからだろうか。
–いつのまにか好きになっていた–
俺は昔から恋愛対象は男で、それに気づいた男達に色々されたものだ。
「〜♪〜〜♪」
「最近お前機嫌いいよな、なんか前より明るくなったような」
「まぁ、少しは楽しくなったかも。でも良くそういう変化わかるよね、流石幼馴染って感じ」
「そりゃ17年一緒じゃ少しの変化もわかる」
「それはそれは、恐れ入ります晴向さん?」
今もこれからも変わらないと思っていた日常が、1人の男によって変わった。
けど、楓馬は窓際の席からいつもある人を見つけては微笑んでる。その人の名前は天ノ雛と言うらしい。悔しかった。考え方が同じで、友達の少ない俺と話してくれた人が追っているのは俺じゃなくて違う人。
–雨が降った時はそれを防ぐための傘がないと自分を守れない。–
「もたもたしてたら取られちゃったよ。ねぇ晴向、今の俺はどんな気持ちになってると思う?」
「分からない。その悲しさを考えることはできねぇよ。」
「あっはは、昔からほんと面白いなぁ。……今俺すごい悲しいんだ。だからさ……」
–「慰めて?」–
–ねぇ、晴向–
–「俺を抱いてよ。」–
降り注ぐ雨から守ってくれる俺にとっての大切な大切な傘はいつか見つかるのだろうか。
なかなか病みめなお話しですが、ハピエンが大好きなので絶対に雨月も幸せにさせます((
ふうひなのお話の別視点から見たお話でした。
次回は楓馬と雛のお話です!秋季と春兎の話も進めます…((
沢山の方に見ていただいてとても嬉しいです…!ありがとうございます!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!