何となく覚えがあるようなその呼び方に振り向くと、
私以外の皆も驚くべき早さで振り向いた。
身長は高過ぎず、でも普通に顔が整ってて、
美しい桜色の髪色をしている長髪。
全く身に覚えのない、イケメンであった。
だけれども、私のことを「しーちゃん」と、
呼ぶ人物は一人だけ心当たりがある。
だが、あり得ないのだ。
心当たりがあろうとも、私の認識ではあり得ない。
そう名乗る彼は、こてんと首を傾げてまたふわりと笑った。
心当たりがある人物、その名はマオ。
彼は自分を認識してもらえた事が嬉しいのか、
にっこりと笑ってくれた。
そう、私の認識で、私をしーちゃんと呼び、
そしてマオなんて人物、私には一人しか心当たりがない。
だって、私の認識では、〝彼〟は〝女の子〟の筈だったのだ。
そしてまさかまさかの気付いていた幼なじみの楓。
有り得ない!!と私に掴みかかりぐわんぐわんと肩を揺らす。
こそこそと話してるつもりなのだろうけど、
割りと聞こえてしまっている男子×4
正体が分かったところでニマニマしてしまっているが、
とりあえずで簡単に紹介しようと思い、
後ろを向くと。
まさかの左と右を包囲され、
挙げ句の果てになんか翔と雪目が笑ってないし、
翔には肩組まれるしあと近い。
男子高校生からする匂いじゃないよ翔くん。
これまた二人とも別の目で観察しながら、
マオちゃんに近付く二人。
怖いって、目が。とつくづく思う私と楓だった。
あやっぱかわいいな~~、
小さいときも子犬みたいだったけど、
やっぱ変わってないな~、耳と尻尾見えるもん。
などと犬バカの様なことを思い浮かべる私だった。
こちらも犬のようにしゅんとなっている樹を、
慰めるように肩を叩く雪。
『ガシッ』
『グイッ』
思いっきりシャツの首根っこを掴まれながら、
半引き摺る様な形で小さく手を振る大和。
そしてこちらは容赦なくネクタイを引っ張りながら、
無理矢理方向を変えさせるがそれでも笑顔の雪。
あぁもうなんか知らないけれど、お疲れ様。
という意味を込めて見送る二人であった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。