立て付けが悪く、開けっ放しのドアをくぐって教室に入ってきたのは
綺麗な黒髪ウルフカットの襟足をみつあみに結い
宝石のようなエメラルドグリーンの瞳をした女。
制服はスラックスで、白黒のパーカーを着ている
そして何より、目の周りが真っ赤だ。
先程まで泣いていたんだろう。
えっくすじぇんだあ???
俺だけではなく、周りのヤツらも不思議そうな顔をしたり首を傾げる。
彩音と名乗った女はチョークを手に取り、黒板にアルファベットを書く。
大きく、綺麗な文字で【LGBTQ】と書かれている。
不完全という言葉が似合いそうな、泣きそうで物足りない笑顔でお辞儀をする女。
俺は耐えきれず、聞いてしまった。
女は唇をかみ締めたあと、答えた。
女は俯く。
俺は女の話に納得がいかなかった。
女は俯いたまま。
隣の席の大先生がまぁまぁ、と宥めてくる。
それに反応するようにびくっと肩を跳ねさせる。
理事長の勝手な判断、という点で我々組の生徒は全員目付きを変えた。
安心せぇ、彩音
今日からお前も、俺らの仲間や
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。