こんな話、誰も信じないだろうけれど、不思議な夢を見た。見たというか、今まさに見ていると言うべきか。
というのも、「これ」が自分の夢なのか現実に起きていることなのか現在進行形で分かっていないのだ。
白い無機質な空間にポツンとベッドが寂しく置いてあり、その真ん中に高齢の女性が横たわっている。やけに見覚えのある映像だと思ったけど当たり前だ、この人は私の母だから。
「その砂が全部落ちるぐらいには……私も歩さんの所に行くんでしょうね」
「お母さんやめてよ、縁起でもない……」
声は聞こえるものの、一人称視点だからか私の姿は見えない。でもまあ、母の亡くなった年から逆算すればまだ50代あたりの私かな。
母はベッドの横の机に置いてある砂時計を見ながら言う。小ぶりで少し古びており、母のチエ、妻子を置いて先に旅立った父のアユム、そして私の名前であるヨウコの文字が掘られている。
なんでも私が生まれた時に記念に購入したんだそうで、母の体の状態が不安定になり始めた頃、思い出の品だからって私に持ってきて欲しいと頼んだ。
「……陽子」
サラサラと落ちていく砂からも母からも目を逸らしていたけど、ふいに母が細い腕を力無くあげるからベッドに近寄る。
名前を呼ぶ声も、母の手が私の頭を撫でる感覚も、嫌にリアルだった。夢にしてはリアル過ぎると思うけど、心地いいからもうなんでもいいか。
「……お……あ…ん」
「……ようこおばあちゃん」
おばあちゃん?母は何を言っているんだ。やっぱり夢?
……あぁそうだ。私は……
ヨウコおばあちゃんと呼ばれた女性が、それは走馬灯だったと気がつく前に、ピーーという音が病室に響く。無情にも、孫の掌では彼女を引き止めることは出来なかったようだ。
古い砂時計の砂も、その頃には全て落ちきっていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。