第24話

story #24
413
2021/01/05 17:57
冨岡さんと交際を初めて早1ヶ月。

私は告白されたあの日、

すぐに蜜璃さんに報告へ行った。
あなた

み、み、み、蜜璃さんっ!!

甘露寺 蜜璃
あなたちゃん!
どうしたの?
あなた

と、とみっ…冨岡さんがっ!

甘露寺 蜜璃
冨岡さんとなんかあったの?!
あなた

こっ…こっ…

甘露寺 蜜璃
こ…?
嬉しさのあまり言葉を

上手く話せなかったのを覚えている。

口をずっとパクパクさせて必死に伝えようとするが、

ひとつも伝わらない。
あなた

あのっ…冨岡さんがっ…

甘露寺 蜜璃
冨岡さんに何かあったの?
あなた

ちがっ…告っ…

甘露寺 蜜璃
告白?!
コクコクと大きく頷き、告白されたことを伝えた。
甘露寺 蜜璃
やったじゃーん!!
すごいっ!!やったね!!!
蜜璃さんは自分の事のように喜んでくれた。

廊下で飛んで喜んだのを覚えている。


*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*


交際を始めたと言っても生活は何ら変わりはない
冨岡 義勇
桜庭。さっきから上の空だぞ。
集中しろ。
あなた

あ、すみませんっ…

なんなら交際する前の方が優しかった気がする…

でも仕事が終わると、
冨岡 義勇
あなた。
あなた

はい?

冨岡 義勇
ここに座れ。
そう指示されたのは冨岡さんの膝の上。

自分でも顔が熱くなっていくのかわかる。

私が冨岡さんの膝の上に背を向けて座ると、
冨岡 義勇
そうじゃない。こっちを向け。
と言われる。

私は冨岡さんの膝に跨るようにして座ると、

そのまま冨岡さんは私を強く抱き締めてくれる。

仕事以外ではこんなに甘々で

いつも私のことは下の名前で呼んでくれる。

その特別感がとても嬉しかった。
冨岡 義勇
はぁ〜…大好きだ…
彼はいつも抱きしめてそう言う。

その言葉が嬉しくて強く抱きしめ返す。
あなた

私もです…

仕事中も触れたくてたまらない。

すぐそばに居るのにすごく距離があるように感じる。

お互いの存在を確かめ合うように抱きしめ合う。

その時、
お館様
義勇、ちょっといいかい?
御館様の声に我に返る。

急いで離れて恋人では無い振りをする。

それがとても苦しかった。
冨岡 義勇
はい。
冨岡さんの声に、御館様が入ってくる。
お館様
すまないね。業務中に。
冨岡 義勇
いえ。
お館様
義勇に新しい任務のおねがいに来たんだが、いいかな?
冨岡 義勇
はい。
お館様
あなたにもお願いしたいんだ。
隣に座って。
あなた

はい。

御館様に促され、冨岡さんの隣に腰を下ろす。

ただならぬ緊張感。

沈黙が流れる中、自分の心臓の音だけが

体の中に響いていた。
お館様
あなたには思い出させるようで申し訳ないんだけど、西の街でまた鬼が暴れているようなんだ…そこは鬼殺隊員も何人か行かせたんだけど全滅でね…
十二鬼月と戦った記憶…

恐怖で体が動かなくなったあの感覚が

鮮明によみがえってくる。

思い出すだけで息が詰まりそうだった。
お館様
本当はしのぶを行かせようと思ったんだけど…しのぶには、頑なに断られてね…
冨岡 義勇
俺は大丈夫です。
お館様
あなた…お願いしてもいいかい?
あなた

っ…

お館様
やっぱりやめておこうか…
義勇、1人で大丈夫かい?
冨岡 義勇
はい。
お館様
じゃあ…頼んだよ。
ごめんね、あなた。
あなた

御館様…

お館様
ん?
あなた

私も行かせてください…

お館様
でも…
あなた

冨岡さんが行くならっ…
私も行きますっ…

お館様
…ほんとに大丈夫かい?
あなた

冨岡さんの補佐役ですから…
鬼殺のお仕事もお手伝いしたいです…

お館様
そうか…
じゃあ、2人にお願いするよ。
今回は西の街に泊まることになるから
準備をしっかりしておいてくれ。
冨岡 義勇
御意。
あなた

御意。

そういうと御館様は部屋を出ていった。

一気に体の力が抜けて、倒れそうになる。

抱きとめてくれた冨岡さんの温もりに

酷く安心して涙が溢れそうになる。
冨岡 義勇
本当に大丈夫なのか…?
あなた

はい…
知らないところで怪我される方が
嫌ですから…

冨岡 義勇
そうか…
つらい目に合わせてすまない…
あなた

鬼殺隊である以上、
これはしょうがない事です。

冨岡 義勇
しかし…
あなた

いいんです…
1人で留守番をするより
私は冨岡さんの傍にいたいです。

冨岡 義勇
そうか…すまない…
その日は任務の準備をして

早めに眠りにつこうとした。

だけどあの日の記憶が邪魔をして寝れなかった。

結局そのまま朝になり出発の時間となってしまった。
冨岡 義勇
じゃあ行くか。
あなた

はい。

緊張は高まるばかり。

心臓は今までにないくらいに忙しくしていた。

少し前を歩く冨岡さんの背中は

とても大きく、たくましく見える。

それと同時に、

また迷惑をかけてしまうんじゃないか…

足を引っ張るだけになってしまうんじゃないか…

と思ってしまう。

冨岡 義勇
大丈夫か?
ときどき振り返り、心配してくれる冨岡さん。

その度、精一杯の笑顔で
あなた

はい。

と返す。

死にたくないと思うのは冨岡さんもだ。

なのに…

行きたくない…怖い…

そんな感情が頭の中をぐるぐると回る。

私が失敗してしまえば、

冨岡さんまで悪く言われてしまう。

戦う前から余計な被害妄想ばかりで、

上手く戦えるイメージどころか、自分が鬼に

食べられるところばかり頭に浮かんでしまう。

不安と緊張、恐怖をかかえ、ただひたすら歩き、
冨岡 義勇
もう着くぞ。
という冨岡さんの声で顔を上げてみれば

私の知っている賑やかな西の街が広がっている。

ここで…鬼と戦う…
冨岡 義勇
まずは泊まるところを探そう。
あなた

はい。

また2人で歩き出す。

こんな街で鬼なんて…

そんなことを思いながら冨岡さんの後をついて行った

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