坂田side
あいつだ。噂をすればやってくる。
またマスクつけて…ほんとに表情が分からない。
俺は入ってきた男のとこに注文を取りに行く。
俺が戻ってくると、志麻くんとセンラが入れ違いで彼の席に向かった。
彼は少し考えたあと、店の外を指さした。
センラが質問攻めにするが彼は一切動じない。マスク越しの口も動かない。
彼がマスクに手をかけた。
そういや、俺こいつがマスクとった顔見た事ないな…
3人でそっと見守る中、彼のマスクが取れた。
彼の顔を見た途端全員が息を飲んだ。
本当に綺麗な子だ、と俺は思った。じっと見ていると心のいちばん深い部分に小さな石を投げ込まれたような気がする。そういう種類の美しさなのだ。
大きな緑の瞳にすっきりとした鼻筋、紅薔薇を思わせる赤い唇。
俺は…いや、女でもここまで美しい者は見たことがなかった。
すると、今まで気にもしてなかった彼の体も、とても美しいものに見えてきた。
血管の浮くような細い腕や足はすらりと長く、全身がきゅっと小さく、彼はまるで神様が美しくこしらえた人形のような端整な外見をしていた。
ここまで…容姿で神に恵まれたものがいようとは…
―ぐちゃぐちゃに犯したくなる―
この美しさを、跡形もなく消し去りたくなるんだ。
それは俺も、志麻くんもセンラも同じ。
にやりと不気味に笑ったことは彼には見えなかっただろうな。
か細いが、初めて聞いた彼の声。
天女が本当にいたなら、このような声なのだろうか。
下地はできた。ここからが俺らの本当の仕事だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。