いきなりはるくんに口を塞がれた。
いつも、はるくんがしてくれる
優しい口づけなんかじゃない
まるで余裕がないみたいな
噛み付くような乱暴なキス
その瞬間、ずっと我慢していた一筋の涙が溢れた。
すると、はるくんはリップ音を残して
唇から離れた。
ぼそっと呟かれた
喉の奥から出されるような
今まで聞いたこのない低い声に
こんな時にドキッとしてしまってる自分がいた。
…そんなこと思ってる場合じゃない…。
言わなきゃ…言わなきゃ
頭ではわかってても中々口に出せずにいると
はるくんはわたしの首に顔を近づけて
鼻を効かせた。
そのまま首元で話すから
息が掛かってくすぐったい。
はるくんが目を見開いていた。
当たり前だ。
ずっと隠してしまっていたのだから。
もう涙が溢れて溢れてしょうがなかった。
きっと泣きたいのははるくんの方なのに。
ほんとに、わたしみっともないな
わたしは、はるくんが黙ってしまったのが怖くて
誤解だけはされたくなくて
弁解しようとした
すると、不意に首筋に走った小さな痛み。
今のって…ひょっとして…
掠れ出た声には僅かに怒りが滲んでいた
肌を吸われる小さな痛みと
鼓膜を刺激するはるくんの低い声
また乱暴なキスが降ってきた。
わたしは、そのキスに身体がふらついてしまい
後ろに倒れてしまった。
だけど、はるくんがしっかり
わたしの頭と腰を持って抱きしめてくれたおかげで
痛みは何もなかった。
顔を上げれば、わたしを上から見てる
はるくんと目が合った
その瞬間ギューッとわたしを強く抱きしめた。
嗅ぎ慣れた落ち着く大好きな香り。
はるくんは、わたしの目をまっすぐ見つめた。
放たれた欲と切なさが垣間見れる声色に
心臓がドクンと跳ねた
わたしの涙をはるくんは指で拭った。
わたしは堪らず
腕を伸ばしてはるくんを抱きしめていた。
すると、はるくんは
わたしの首筋に顔を埋めた
何度も何度も首筋に走る痛みがきた
だけど、わたしは嬉しい気持ちでいっぱいだった。
はるくんに、たくさん愛されてるって実感できたから
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!