第17話

おそろい‪💚💙💜❤️
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2025/07/25 14:04 更新
暑さも徐々に落ち着き、肌に当たる風が薄ら冷たく感じてきた頃、小学校では体調不良者が続出しており、ユーキもまたその1人だった。


カイ「おはよタクヤ、ユーキ今日学校お休みするって。職員さんが言ってたよ。」

タクヤ「え…ぐあい、わるいの?」

カイ「うん、ちょっとお熱あるみたい。」

カイが食器を並べているテーブルの向こう、リョウガが伸びをしながら牛乳を飲んでいる。

リョウガ「ユーキが風邪か〜、小学校で今流行ってるんだろ?タクヤも気をつけろよな」

タクヤ「……わかってる」

タクヤはあんまり口を動かさずにそう答えて、ポリポリと食パンの耳をちぎる。

タカシ「ユーキにい大丈夫かなぁ?」

カイ「今日ゆっくり休んで明日元気になってるといいね」



そんな会話を聞きながらタクヤは残りの食パンを無理やり口に詰め込んだ。








タクヤ「いってきます」


そう言って家を出てきたはいいものの、ユーキがいないと何となく落ち着かないし、気分が重い。



それは学校に着いても変わらなかった。





2時間目の授業中、視界の端がぐにゃりと揺れ、前の方に立っている先生の声が、すこし遠くに感じる。



なんか、ぼーっとする.....



鉛筆を握った手が、じんわり汗ばんでいた。


身体がだるくて、頭の奥がぼんやりする。



教室の空気はいつもより重くて、椅子に座っているだけでも息がしづらい気がした。


隣の席の子がこっそり心配そうに覗いてきて、先生に耳打ちしたのがわかった。




「......タクヤくん、ちょっと、保健室行ってみようか」




その声に頷くのも、少し時間がかかった。









保健室の先生は、タクヤの顔を見るなり優しく声をかけた。

「あら、タクヤくん。だいぶ顔赤いねぇ……。とりあえずお熱測りたいんだけど、座れるかな。いや、やっぱり横になっちゃおう。つらいもんね。」

保健室の先生はフラフラとしていたタクヤを見兼ねてベットに横にする


熱を測ると、37.9度。


「これはちょっと、お家の人呼んで早退しようね」

先生が電話をかけているその会話をうっすら聞きながら、タクヤは目を閉じたままゆっくり呼吸した。











30分ほどして、カイがやってきた。
保健室のドアが開くと、先生が「お兄さん、ありがとうございます」と言って出迎える声がした。

カイ「タクヤ、大丈夫?」

その声に、タクヤはうっすら目を開けた。
ベッドのカーテンが静かに開いて、制服姿のカイがタクヤをのぞき込んでいた。


タクヤ「…カイ?…なんで?」


カイ「今日テストで早く帰ってたからさ、ちょうど良かった。」



そう言ってタクヤを撫でる手は温かくて、大きかった。




カイはそっとランドセルと水筒を自分の肩にかけて、スニーカーを履かせるのを手伝ってくれる。



先生「今日はゆっくり休んで、また元気になってから学校おいでね」


タクヤ「……はい」









学校の門を出ると、ひんやりとした空気が頬をかすめていく。


タクヤは少しふらふらしながらも、カイの指をしっかりと握っていた。




カイ「……まだ平気? 歩けそう?」

タクヤ「うん……」


タクヤはそう答えるものの、歩幅は徐々に小さくなっていた。

信号を渡るとき、ちょっとよろけそうになってタクヤはぐっとカイの手を握りしめた。



カイ「……タクヤ、抱っこしようか?」

ふいに、カイが静かに言った。

タクヤは立ち止まってカイを見上げた。
カイの右肩にはランドセル、左肩には水筒。明らかに荷物が多い。


カイ「……カイ、もういっぱい持ってくれてるから、だいじょうぶ」


タクヤはかすれた声で、そう答えた。


でも、カイはふっと笑って、「大丈夫だって」と言って、しゃがんだ。

カイ「ランドセルも水筒も軽いもん。タクヤのほうが大事」

そう言いながら、両手を大きく広げる。

カイ「ほら、おいで」


タクヤは一瞬だけ迷ったけれど、次の瞬間にはカイの胸の中にそっと身を預けていた。



背中に腕が回され、ふわりと体が浮く。




タクヤ「カイあったかい」

カイ「タクヤもあったかいよ」



あたたかく包まれた腕の中で、タクヤは少しずつ目を細めていった。



まぶたが重くなって、言葉がふにゃふにゃになる。



タクヤ「……ねむい」


カイ「いいよ、寝ちゃっても。もうすぐ家だから」





そのまま、タクヤはカイの胸にもたれたまま目を閉じた。









________


タクヤが次に目を覚ますと、そこには見慣れた景色が広がっていた


自分の枕元には体温計や水が置かれている


足元に目を向けると、誰かがベットに寄りかかって何やらブツブツいいながら本を読んでいる



タクヤ「カイ…、?」


タクヤが小さな声でつぶやくと本を閉じて立ち上がり、覗き込んでくる


リョウガ「カイは今部屋で勉強してるから俺な」


そう言って額に当ててくる手が気持ちよくてタクヤは目を細める

リョウガ「どう?気持ち悪かったりしない?」

タクヤ「うん、だいじょぶ」

リョウガ「なら良かった」

「ちょっとアイスノン変えるか」とタクヤの頭の下にあるぬるくなったそれを抜き取ると、リビングへ行こうと歩き出したその時、ドアがノックされる

ユーキ「たくや…だいじょぶ?」

恐る恐る開かれた扉の先にはユーキがいた

リョウガ「あれ、どーしたのユーキ。寝てたんじゃないの?」

心做しかしょんぼりとしたユーキにリョウガが声をかけると、とことことタクヤの方へ歩いてきてリョウガと同じようにタクヤの額へ手をやる


ユーキ「おねつ…ある?おれ、うつした?」


リョウガ「…うつしたって、ユーキのせいじゃないだろ?」

ユーキ「でも昨日一緒に遊んだりしたし…」

ちいさくうつむいたユーキの眉が、しゅんと下がっている。


タクヤは、ゆっくりと手を持ち上げて、ユーキの服の袖をちょんとつまんだ。


タクヤ「……ゆーきのせいじゃ、ない。」


その声はまだかすれていたけれど、ちゃんとまっすぐにユーキに向いていた。

ユーキは目をまるくして、しばらく黙っていたが、ぽつりと「そっか」と返した。




リョウガ「おまえら、仲いいなー」

そう言って、ちょっと笑うとアイスノンを持って部屋を出ていく。




するとユーキはベッドのわきにちょこんと座って、タクヤの顔をじっと見つめていた。



ユーキ「……タクヤ、さびしかった?」

タクヤ「べつに……」

でも、ほんのすこしだけ目をそらしたその仕草に、ユーキはにこっと笑う。

ユーキ「タクヤ、ひとりのとき、さびしくなるんだよね。おれと、いっしょ」

タクヤ「……はやく、なおって。つぎは、いっしょに学校いこ」



ユーキは笑って大きく頷いた。

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