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第5話

第5話「心配」
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2024/04/26 13:41
葵
どうしようっかな〜
すぐ帰ったらお母さんに怒られるし、
田舎だから時間潰すところもないし。
そう言って私は泣き腫らした
目の痛みを我慢しながらとぼとぼと歩き出した。
その日は晴天で、雲ひとつ無いいい天気だった。
少し遠くで鳴る蝉の声。道路を通る虫たち。
眩しい夏の日差しに合わない複雑な気持ち。
葵
……公園でも行くかな。
私は子供の頃花とよく遊んでいた
公園に向かうことにした。
悩みがある時はよくその場所にいって、
悩んでた思い出の場所。
その公園はいい感じに林が多くて夏でも
涼しかった思い出がある。
葵
すぅー…はぁ
涼しい〜!懐かしいなぁ。
私はベンチへと腰を下ろしゆっくりと
時が過ぎるのを待っていた。
葵
あ!ブランコだ!
懐かしいなぁ…何処まで靴飛ばせるか
花とよく競ったな。
あっちにはタイヤ!
花とタイヤの陣取りゲームしたな
鉄棒も!私が逆上がりできるまで
花と一緒に練習したなぁ
花の説明が下手くそで全く分かんなかったんだよね…ふふっ
春樹
春樹
ふーん。学校サボって思い出
の感傷に浸ってる感じ?
葵
あ!花の彼氏…。
いや!えっと、違くて……
春樹
春樹
いや俺まだ花の彼氏じゃないし、
お前が逃げ出したから
花が俺に探して来いって
言われたんだよ
葵
そ、そっか!
ごめんね?
春樹
春樹
それとさ、俺名前あるから!
春樹っていうちゃんとした名前がね!
葵
あ、あぁ…
春樹くん?ごめんそう言えば
ずっと名前聞いてなかったね
春樹
春樹
ほんとだよ全く…
そう言って春樹くんは私の隣に
不機嫌そうに座り込んだ
葵
……
春樹
春樹
まぁ、元々どっちも第一印象が悪かったせいで
話すことも無いよな。
そう思っていると春樹くんが口を開き出した。
春樹
春樹
…あのさ、花のことなんだけど、
逃げ出したって事は
本当に花に恋愛感情を
抱いてるってことなの?
葵
っ……
春樹
春樹
花に言うつもりじゃないし、
気になるだけなんだ。
良かったら教えて欲しいんだけど。
葵
…好きだよ
春樹
春樹
え?なんて…
葵
だから!花のことは恋愛的
に好きだって言ってるの!
葵
そうさ、お前なんかよりずっと、
ずーっと前から花が好きだった!
なんで、なんでそれを!
お前なんかに
取られなきゃいけないんだ!
それがずっと気に食わなかった!
だからお前が、嫌いだ!
私は今まで胸の内に隠していた感情を
ぶつける様に大きな声で話した。
春樹はいきなり大きい声を出したせいか
呆気に取られている。
春樹
春樹
あ、あぁそうか
葵
そうだよ!
分かったならさっさとどっか行ってよ…
泣き止んだはずなのに私の目は
まだ、泣き足りないみたいだ。
今まで我慢していた分を取り返すように
わんわん泣いた。
葵
もうこんなんじゃ、
私もう花に会えない…
知られたくなかった…
花が知ったらきっと、
気を使わせてしまうから…
春樹
春樹
俺はさ、元々お前が嫌いだったし、
お前なんてどーでもいいと思うけどさ
一つだけ言ってやるよ。
花は親友をそんな風に思わない。
お前がいっちばん知ってる事だ。
春樹は気まづそうにしながらも私の目を
しっかりと見て言った。
そんな事有り得ないと思うけど
今はなんだかその言葉に救われた気がした。
春樹
春樹
あ、後さお前やっぱり馬鹿だな!
親友なら好きーって
言っても大丈夫だろ!
葵
はぁ〜?
前言撤回。
春樹の言葉には救われないようだ。
そういう好きじゃ無いんだよ!
私はため息をついて春樹から
逃げるように走った。
春樹は怒っていたけど何だかとても面白かった
その時見た夏の景色はこれからも
忘れないと誓えるくらいに美しかった。
花に分かって貰えなくとも良いから
好きを伝えてみようかな。









第5話 終わり

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