無事動画を上げられた。
画面の中の俺らは自分たちでも自分じゃないと思うほど暗くて、
ガチャッ
誰もいない部屋。今日もやっぱり眠れない。
まだかすかに匂いが残ってる。
この匂いがなくなってしまったら彼の匂いを忘れてしまうんだろうか。
目を閉じるとタイピング音が遠くから聞こえているような感じがして、まるで目の前で彼が編集をしているような、夢の中だけでもいいからそうであっていて欲しかった。
彼は俺には早く寝ろっていうのに自分は全然寝ない人だった。朝方まで起きてるのなんて普通だった。
いつも動画のストックがあるのは彼が頑張ってたからで、当たり前の事じゃなかったんだね。
あの日だって本当はストックなんてなかったのかもしれない。俺を寝かせた後もまだリビングの電気は光り続けていた。
やっぱり君は全然寝ないからさ、
そっちでも泣いて寝てないって思うと俺も泣けないんだよ。
えいちゃんがいなくなったのに何故か声を上げて泣くことが出来ないんだ。
亡くなった報告を受けた時もお葬式もお別れ会も1度も…彼に聞こえないようにバレないように静かにこらえるしかなかった。
そして今日も彼のベットにはいって眠りにつく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。