第5話

【放課後、密室、先輩とひみつ】3
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2019/03/19 05:17
友理奈
見たかったなぁ~、澪先輩の全力勧誘。あたしまだその時、梨子と話したこと無かったもんね。もったいなかった。てか、何で澪先輩は、そんなに梨子がよかったんだろうね?
帰宅部の友理奈は帰り支度をすっかり済ませて、私の隣の席にかばんを置いた。
西川梨子
西川梨子
あとで聞いたんだけどね、私と知宏が付き合ってるんだと思ったからなんだって。すでに彼氏がいる子なら、浅野先輩に騒がないだろう、って
友理奈
あー……、そうだね。あたしも最初は、梨子は知宏くんと付き合ってるんだと思ってたよ
西川梨子
西川梨子
違うよ、幼なじみ
付き合っていないし、だからといって浅野先輩に騒ぐつもりもない。
だって、私はあの人のことが……。
友理奈
でもいいじゃーん、サッカー部。あの浅野先輩でしょ? イケメンがサッカーとかやばいよね。そんなん、好きになるよね~。うらやましいよ
西川梨子
西川梨子
ないよ、ありえない。好きになんてならない
強めの私の否定に、友理奈がキョトンとする。そして、すぐに諦めたようにため息をついた。
友理奈
そうだね~。澪先輩の彼氏だもんねぇ。ふたりとも完璧すぎて、好きになっても無駄な感じはするよねぇ
西川梨子
西川梨子
じゃなくて……
誰かの彼氏だとか、私自身が男子が苦手だとか、そんな理由以前の問題がある。
杉知宏
杉知宏
あれ? 梨子、行かねーの? 部活。お前、いつももっと早く行くじゃん
西川梨子
西川梨子
え?
いつからそこにいたのか、知宏にそんな指摘をされて、教室の壁掛け時計を見て飛び跳ねた。
西川梨子
西川梨子
こんな時間!
友理奈にのんびりと「いってらっしゃーい」と見送られ、私は知宏と教室を飛び出した。







浅野大翔
浅野大翔
へぇー? ふたり仲良く遅れてきたんだ?
笑っているけど笑顔じゃない。いつもヘラヘラしている人ではあるけれど、その辺の違いは区別がつく。
サッカー部の練習グラウンドに最後に到着してしまった私たちは、二年生の浅野大翔先輩につかまっていた。
遅れてしまったのは事実だから、反論は出来ないけれど……。
知宏ひとりだけだったのなら、きっと先輩はこんな意地悪な言い方はしなかっただろう。
私が、一緒だったから……。
渡瀬澪
渡瀬澪
こら、浅野くーん。後輩いじめるのは禁止だよ
何も言えずに、知宏と一緒に黙り込んでいると、浅野先輩の後ろから澪先輩が顔を出した。
渡瀬澪
渡瀬澪
知宏くんは、今日は先生に呼び出されてるから少し遅れますって、ちゃんと前もって連絡くれてたんだよね。梨子ちゃんは、ふたりで一緒に行きたいから待ってただけなんでしょ?
西川梨子
西川梨子
あ、いえ、そういうわけじゃ……
ここで否定するよりも、そういうことにしておいた方が後々面倒くさくなくていいのかな。
私は反論するのをやめて、頭を下げた。
西川梨子
西川梨子
……すいません
渡瀬澪
渡瀬澪
いいんだよー。梨子ちゃん、いつも誰よりも早くきてくれるんだから、今日一日くらい
笑顔で労う澪先輩の言葉に、嬉しくなったのも束の間。
浅野大翔
浅野大翔
梨子ちゃんて、最初からずっと知宏にべったりだったもんね
浅野先輩が、にっこり笑って嫌味をひとつ。

──浅野先輩は、私にだけ意地悪だ。

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