第14話

LAST JenoSide
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2024/03/19 07:46
LAST
夢を見ていた。

あたたかい光に包まれて、幸せで、愛する彼女がそばにいて、友達がそばに居る。
背中には何も生えてなくて、ただ、生きることを全うするために存在してる。
天使たちに守られ、幸せに暮らす僕らは、人間で。



ゆっくり目を覚ませば、あなたが僕に抱きついて、くつろいでいた。
ここは少し寒くて、廃れていて何も無い。
特別暗くて最悪な訳では無いけれど、天界に比べればだいぶ酷いと思う。


それでも良かった。あなたが今そばに居てくれるから。
ううん、そばにいると誓ったのは僕だね。
ジェミナは、今何をしてるだろう。
あいつまでこっちに来たら、たまったもんじゃない。



人間たちを救うために、犠牲にされたあなたを、僕は愛し、1人にできなかった。
だって、そばに居るって、約束したんだ。
天使の時にさ、約束したんだよ。

1人にしないって。
僕がいないと、あぶなかっかしいあなたが可愛くて、仕方なくて。
君が1人で堕ちるのなら、僕も一緒にいようと思えたんだ。


あの幸せな夢が続けばよかったのにね。
夢……Dreamの反対は、現実だなんてよく言うけど、そんな生ぬるいものじゃない。
夢の反対は絶望。
僕らはアザゼルに襲われて何度絶望を味わっただろう。



マクヒョンたちにも、絶望を味わわせてしまった。
でも僕らは神に背こうとした訳じゃないから。
すこしであれば、みんなにも会うことが出来た。

こっちも、割と辛くないよ。
あなたがいるから。

でもあなたはやっぱりたまに、泣きながら寝てる時がある。その姿が可哀想で仕方なくて、涙を拭いてあげては、抱きしめて寝る。




あなたが僕によりかかって、くつろぎながら本を読んでいる。





「天使って可哀想だね」




掟がいっぱいあって、こうして愛する人とキスも声の掛け合いもできない、なんにも許されてないんだもん、なんて、天使でいたかったと願う君が必死に涙を堪えて言う皮肉は、愛がこもりすぎていて、泣きそうになる。



あなたが読んでいる本を覗けば、涙を流す天使の絵が描かれている。
あなたの頬に優しく手を添えれば、こちらを向いたから、キスをした。
照れて僕の手に擦り寄る君が可愛くて、我慢できなくてそのまま体に腕を回して抱きしめる。



「天使って可哀想……ね、ジェノもそう思うでしょ?」
🐶「……うん」
「どうする?もう1回天使に戻れるよう、神様にお願いしてみよぉか」
🐶「あなたッ……、」
「ごめんね……ジェノ、愛してる」



わざとらしくクスクスと笑いながら言う君を見て、耐えられなくて。
天使でい続けたかったね、あの時みたいに、みんなで幸せに暮らしたかったね。


でも大丈夫、僕らは堕天使になっても、ずっとずっと一緒だよ。君は僕が愛しているから、僕に愛されているから。人間の僕なら、大人しくて、奥手で他人にあまり関与しない人だっただろうな。でも僕は天使だったから。あなたとは何十年も共に過ごしてるから。人間とは感覚が違う。

いつかもし、生まれ変われたら、その時もまた一緒にいようね。





🐶「あなた、君が幸せなら、僕はそれでいいよ」
「……でもいつか、また天使になれたら、その時は言葉を交わさずとも愛し合えるね」
🐶「地獄(ここ)なら、こうして、なんでも出来るから?笑」
「ん……そう、ここならキスをしてもお互いを触っても、交合(まぐわ)ろうとも、掟もなにもないもん」
🐶「……堕天使のあなたも可愛いよ、」





天使の天秤は壊れている。
でも、それでも僕はそれを知りながら、君への愛情をはかる。だから大丈夫、ずっとそばに居るよ。
これは堕天使からまた何に変わろうとも変わらない、永遠の約束。

きっと僕らは堕天使になってこれからも、自分の怒りを、堕ちなければならなかった怒りの感情を【犠牲にして】、かつて愛していた人間たちを襲わぬようにお互いを愛し続ける。

君に夢中になれば、人間には手出しせずにいられるからね。
わざと堕とされたら怒りの感情は、きっと消えない。だから僕らは犠牲を重ねて、自分を犠牲にし続けながら君を愛す。



これで、これでいいんだよね?





🐶「永遠を違うよ、あなたに」
「うん、ジェノ、私が何になろうとも、ずっとずっとそばにいてね」
🐶「うん、もちろん」
「キスして?」
🐶「……その先まで、喜んで」





END.

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