NOside
「松渕憲史が死にました」
この言葉で、彼に救われた後の鋼鉄はなんと思っただろう。
彼の目の前には満面の笑みの大きな憲史の写真。周りには沢山の花が捧げられている。
憲史の両親に貸して貰った子供用スーツを来て、彼の両親と共に憲史の死を悲しんだ。
彼は人が良かった。誰にでも優しかった。やられたらやり返すというどこか凶暴性を含みながらも、自分の大切な人には何があってもそばに居る、身内を大切にできる人だった。
そう言うのは彼の祖母だった。祖母は戸狩に指を指す。
清々しい程の責任転換。戸狩はフリーズした。
そこに憲史の両親が反発する。
戸狩が幼い頭を必死に巡らせる。
それで気付いてしまった。赤森地区は差別される地域だと。憲史はそんな自分を気遣って一緒に居てくれたんだと。
戸狩は泣きそうになった。
その時、思い出したのは憲史があの時言ってくれた言葉。
『差別するヤツらに負けたらダメだ。人間ってのはな、生まれてきた時点で平等なんだ。性善説とか、性悪説とかあるけど、関係ないんだ』
『だからな……そういう奴にどつかれたら、どつき返せ!!』
戸狩はまだ子供だった。だからできなかったのだ。
弱いとか、逆らう気力がないとか、そういうのではなく、もしここで反発してしまえば、憲史に怒りの矛先が向かうかもしれないと思ったからだ。
葬式が終わった後、戸狩は彼の両親に感謝を告げて行方を眩ませた。
その後、彼はまたゴミ捨て場から食物を探す日々を送る。
戸狩の母は……帰っていない。
あとはもう、私達の知っている通りだ。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。