第42話

肆拾弐
375
2020/12/28 03:09
鳥羽 蒼
ほーたるっ!何してるの?
鳥羽 蛍
お姉ちゃんの花かんむり作ってるの!
鳥羽 蛍
ほら、見て!
鳥羽 蒼
えっ、ほんと?これ蛍が作ったの?すっっごいじゃん!しかももらえるなんて!蛍が妹なんておねーちゃんは幸せ者だなぁ
鳥羽 蛍
えへへ
その優しい手が好きだった。

その手で撫でてくれるととても心地よかったし、不安なときでもお姉ちゃんの手を握れば安心できたから。


その優しい声が好きだった。

やわらかくて、少しくすぐったい声。
いつもその声で褒めてくれるし、楽しいお話をいっぱいしてくれたから。


他にも、たくさん。

私は、お姉ちゃんが大好きだった。
鳥羽 蒼
ふふ、大好きだよ、蛍
鳥羽 蛍
···うん、私も
ああ、なんて幸せ。

なんて、幸せだったのだろう。




鳥羽あおいという、尊い人を殺してしまうまでは。





* * * * *





鳥羽 蛍
お姉ちゃん、最近良いことあった?
中学に上がった頃。

最近のお姉ちゃんは、とても幸せそうにしていた。
もともと幸せそうにしている姉であったが、最近はより一層幸せそうに見える。

特に、携帯を眺めている時。
鳥羽 蒼
うっ·····え、えっとね···
お姉ちゃんは自分の人差し指どうしをツンツンと合わせながら、耳を赤らめて言った。
鳥羽 蒼
····か、彼氏が、できました····。
かれし。····彼氏?
鳥羽 蛍
·····え···えぇ!?
鳥羽 蛍
お姉ちゃんそれほんと!?
驚きのあまりずいっとお姉ちゃんの方へ乗り出すと、お姉ちゃんは今度は頭のてっぺんから首まで赤くしてコクコクと頷いた。
鳥羽 蛍
へぇ···
鳥羽 蛍
···彼氏、どんな人?
あまり見ないお姉ちゃんの表情に少しニヤニヤしながら、私はお姉ちゃんに問う。

するとお姉ちゃんはほっと一息ついてから楽しそうに話し出した。
鳥羽 蒼
えっとね···頭が凄く良いの。テストだといつも学年で十位以内に入るくらいなんだよ
鳥羽 蒼
運動はちょっぴり苦手だけど、そこがまた可愛いんだ
鳥羽 蒼
でもね、何より凄く優しいんだよ
鳥羽 蒼
何だろう···紳士的?かな
鳥羽 蒼
学校では少し人気な人だったから、お姉ちゃんが勝ち取れてラッキー!みたいな?あっ!でもね、そんな道具とか飾りとかそんな風には思ってないからね!
鳥羽 蒼
自慢の彼氏です!
へへ、とお姉ちゃんは幸せそうに笑った。

いいな、お姉ちゃん。すごい幸せそう。
なんだか私まで幸せな気分になっちゃう。
鳥羽 蛍
えへへ、よかったね
鳥羽 蛍
彼氏といっぱいイチャイチャしてね!
鳥羽 蒼
イ、イチャイチャ···!?
鳥羽 蛍
うん!あ、でも私ともたまには遊んでね
再び顔を赤らめるお姉ちゃんを眺めながら、私はふっと笑って言う。

するとお姉ちゃんは一瞬だけきょとん、としてから優しくふわりと笑った。
鳥羽 蒼
うん
そのはにかむような優しい笑顔が、私の一番のお気に入り。

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