第21話

橙色 自分が一番の敵
402
2020/10/17 01:44
作者
作者
いつもとスタイルが違います。
お楽しみください。
ー羨ましいー

意味もなく呑んだ言葉はいつしか心を型ずき掘り返せなくなってしまった。

ーまた目が悪くなったなー

知らぬ間に曇った目先にみにつけた鏡眼はいつしか自分を超えて自分を示すものになってしまった。

ーんふふ…アハハー

鳥声を真似るような笑い声はいつしか自分より好かれたらしくわからぬ振りをする我はただ笑うのみ。

ーすぅー

息を吸うがされど矢を引く指先は舞うことを知らずただ震えるのみ。

ーあーまた負けちゃいましたー

勝つ気は無いが笑ってればどうにかなるだろうという短絡的思考によがって生きてる自分がいると思ったりして。

ー兄さんお金貸してくださいー

足は孤独と踊り財布は心を削って潤す日々に飽きたかと問われればやり足りないと答えるのは酔狂という答えにたどり着く。

ー初めましてー

結局我に自我はなく劇の舞台で踊っているということすら認識出来ぬ創作物たちを少しだけ羨んで頭をたれる。

ーごめんなさいー

ただ謝ることを軸として周りをぐるりと回って足をくじいて床に伏せて彼らの冷眼をのぞき込む。

ーありがとうございますー

謝る言葉よりも長く舌が回りきらず噛みそうになり肝が冷える。
床から見上げた彼らの目は綺麗だと思うけれどそれよりも上から見る景色が綺麗とかなかなか言えたことじゃない。

ー許してくださいよー

本当に許してくれるとは片時も思わないけれどとりあえず許しを乞う姿勢を取って彼らの罵声を浴びたいとか身勝手と共に心を沈める。
その方がきっと心地いいという幻想を見ながら最初から自分の居場所は自分の心の中にしかなかったのだからというわかり切った言葉を回す。

ー正直ふざけないで欲しいですねー

わかってるとかアホらしいの権現。
私に触らないで欲しいとか非人間的で口に出せない。
あなたのことなど私からしたら微塵も分からないのだから許されるわけが無いじゃないのと思ったりしてるから。

ーお人好しですからー

ごめんね。本当はこんなこと心から言いたくないんだわ。本当は好かれたくて本当は許されたくてご機嫌取りなのよ。ほら心をさらしたから私のことは信じやれるでしょ?

ー八方美人なんですよー
そんなの私に言葉を回した瞬間していたでしょう?私のことは何一つ信じてはいけないのに私の事を大切にしたいとか不思議な人ですねという言葉を投げ返す。

『さようならやな』

「はい。さようなら」

『寂しくないん?』

「兄さんが抜けるぐらいで寂しくないっすよ」

ー猫かぶりですのでー

うるさい黙れ。

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