第2話

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2020/01/25 08:36
「!……あなた、」
『え、累、ねぇ…どこ行くの?』
「…やっぱり気分が変わったんだ。」
『な、何言ってるの…?』
「…良いから。」
『え……?』
「僕はあなたを大事にしてあげたい。」


「特別なあなたを。」


「だから、少しここに居て。」
その言葉だけを残して、


私の火照った体も、快感も。


置き去りにして、


行ってしまった。
何でだろう…


何か、気付いたような、


さっき、いなくなるときに、


ハッとしたように目を見開いたから。


きっと何か訳があるんだろう。


あ、そういえば。


私、ここからどうしたら良いんだろう…
累は行ってしまった。


私はしっかりと着物を着て、


部屋の外を覗いてみる。


すると、ただ、暗く、


廊下が続いていた。


床は一歩踏み出すだけで、軋む音がする。
〝ここに居て〟とは言われたけれども、


そういうことにも行かない。
彼も、私の事を知らないけれど、


私も、彼の事を何も知らない。


名前は、累。


家族が沢山いた。





あ、あれ。


ここ、どこだろう…
さっきの部屋も、暗くてどこか分からないし。


とにかく、誰かに会えたら。


『ひゃっ………!!』
私が少し叫んでしまった理由。


それは、目の前に大きな、とても大きな鬼がいた。
記憶を思い出してみると、


確か、『父さん』と呼んでいた。
目の前の『お父さん』は、


私の目を見つめていた。





─────そうか、


私が、人間だから。
その時、自然に私の口角は上がり、



笑っていた・・・・・


可笑しな噺だ。


殺されるかもしれないのに、


喰われるかもしれないというに。
私が笑っているのだから。


いいや、でも殺されたって構わない。


ここへ来たのはそういう意味だったから。
私も、その怪物のような鬼────


『お父さん』の目を見た。


そして、私は『お父さん』へ、
『殺したいなら殺せばいい。』
『美味しくないけどね。』
私がそう言うと、『お父さん』は暗闇で光る、


水晶玉の様な目を向けて、


私へと殴りかかろうとした。
──────累には申し訳ないけれど、


私は、この世に居たって、必要が、無いから。
私はその拳を避けずに受ける気で立った。


────死ねるなら、構わない。
『累、ごめんなさい。』
ビュンッと、風を切る音が聞こえる。
「謝るなら僕に直接言ってくれない?」
暗く、静かな古びた廊下に、


冷酷な、累の声がした。

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