第6話

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2020/04/20 07:15
『おはよ…う?どうしたの、その髪。』


戸を開け、私を見る。


髪を切ったからか、首元が少し涼しい。


累も驚いたのか、少し目を開いていた。
「切ったの、…アイツらに、バレないように。」


『…そっか、短くても綺麗だよ。』


「…ありがとう」


綺麗の意味は、よく分からないけれど。


礼を言うのが筋だろう。


『さて、行ってらっしゃい。』


『日が沈むまでには帰ってね。』


「…道に、迷わないといいけど。」


『あなたが行ったら、糸の目印を着けておくよ。』


『それを回収しながら帰ってきてね。』
「分かったわ。」


『着物は…大丈夫だね。』


「特にすることも無いかもしれないけれど、」


「色々見てくる。」


『うん、帰ってくるの、待ってるよ。』


『日が暮れても帰ってこなかったら、』


『僕が迎えに行ってあげるから。』
「…!う、ん。分かったわ。」


その時の眼は、鬼の眼で。


痛くなるような、そんな雰囲気を醸し出していた。









それから、何となく覚えている山道を降りて、


村を一つ越え、栄えている町へ行った。


人が中々多く、屋台や、店、


色んなものが売っていた。


お金も無くはない。


特に意図はないけれど、


空を見上げた。


燦々と照らす太陽と、どこまでも青い空。


空気もあの山よりも澄んでいる。


死にたい私の筈だけど、


美しいものは美しいし、綺麗だと思える。


でも、いざどこかへ、なんて。


逃げれる筈がない。


それでも、あまり離れないように、


足を進めて、品を見る。


人が多いのは変わり無い。




『ドンッ』



「…すみません!」


すれ違う際に、男とぶつかってしまった。


やはり、何か失敗したときに謝る癖は、直らない。


?『?あぁ、大丈夫だ。』


「…では…」


?『待て。』


と、去ろうとする私の片腕を掴む男。


その男の目は奥深い、青い眼をしていた。


何故、私の腕を掴む必要がある。


でも、何だろう、服装は軍…の様な。


何かの隊服の様なものを着ていた。


まさか、遊郭に言い付けられて私を───────
?『…どこから来た。』


…やっぱり、そうだ。


「どこ、も、何も。ただの町で住んでおります。」


「何の御用ですか。大声を出しますよ。」


お願い、この脅しで引いてください…


?『…?何故大声を出す必要がある。』


?『嘘はいい。答えたくないならそう言え。』


?『無理強いをする必要はない。』


「あ、あの、何者なんですか…貴方は。」


「一体何の方ですか…」


?『俺は、』








『冨岡義勇。鬼殺隊だ。』


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