『おはよ…う?どうしたの、その髪。』
戸を開け、私を見る。
髪を切ったからか、首元が少し涼しい。
累も驚いたのか、少し目を開いていた。
「切ったの、…アイツらに、バレないように。」
『…そっか、短くても綺麗だよ。』
「…ありがとう」
綺麗の意味は、よく分からないけれど。
礼を言うのが筋だろう。
『さて、行ってらっしゃい。』
『日が沈むまでには帰ってね。』
「…道に、迷わないといいけど。」
『あなたが行ったら、糸の目印を着けておくよ。』
『それを回収しながら帰ってきてね。』
「分かったわ。」
『着物は…大丈夫だね。』
「特にすることも無いかもしれないけれど、」
「色々見てくる。」
『うん、帰ってくるの、待ってるよ。』
『日が暮れても帰ってこなかったら、』
『僕が迎えに行ってあげるから。』
「…!う、ん。分かったわ。」
その時の眼は、鬼の眼で。
痛くなるような、そんな雰囲気を醸し出していた。
それから、何となく覚えている山道を降りて、
村を一つ越え、栄えている町へ行った。
人が中々多く、屋台や、店、
色んなものが売っていた。
お金も無くはない。
特に意図はないけれど、
空を見上げた。
燦々と照らす太陽と、どこまでも青い空。
空気もあの山よりも澄んでいる。
死にたい私の筈だけど、
美しいものは美しいし、綺麗だと思える。
でも、いざどこかへ、なんて。
逃げれる筈がない。
それでも、あまり離れないように、
足を進めて、品を見る。
人が多いのは変わり無い。
『ドンッ』
「…すみません!」
すれ違う際に、男とぶつかってしまった。
やはり、何か失敗したときに謝る癖は、直らない。
?『?あぁ、大丈夫だ。』
「…では…」
?『待て。』
と、去ろうとする私の片腕を掴む男。
その男の目は奥深い、青い眼をしていた。
何故、私の腕を掴む必要がある。
でも、何だろう、服装は軍…の様な。
何かの隊服の様なものを着ていた。
まさか、遊郭に言い付けられて私を───────
?『…どこから来た。』
…やっぱり、そうだ。
「どこ、も、何も。ただの町で住んでおります。」
「何の御用ですか。大声を出しますよ。」
お願い、この脅しで引いてください…
?『…?何故大声を出す必要がある。』
?『嘘はいい。答えたくないならそう言え。』
?『無理強いをする必要はない。』
「あ、あの、何者なんですか…貴方は。」
「一体何の方ですか…」
?『俺は、』
『冨岡義勇。鬼殺隊だ。』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。