「え…?」
『…応援じゃ…ない…のか…』
目の前に、ふらふらの状態で現れたのは、
冨岡さんに似た隊服を来た男性だった。
よく見ると、怪我と出血が酷く、
ぽたぽたと血が落ちていく。
「だ、大丈夫ですか、傷が─────」
『逃げ…ろ、鬼が、出る…』
…知っている。
なんて言えない。
ごめんなさい、話を変えるわ。
「貴方の方こそ、出血が酷い。」
「だから今すぐ山を…」
せめて、逃げて。
死んでほしくない。
『いいや、出来ない…。』
「どうして!?死んでしまうわ!」
思わず声を荒げてしまった。
このまま失血死なんて、嫌な筈なのに。
彼の、何が、そこまでしているの。
『俺は、鬼殺隊だ、から。』
『鬼を、仲間を見捨てて逃げるなんて、』
『出来ないんだ。』
「…ならせめて、手当…」
グキッ
その音と、共に、
彼の首は回り、倒れた。
首が、反対の方向に向いて、倒れたんだ。
数秒間、何も考えれなかった。
目の前で、人が亡くなったから。
一体誰が、なんで、
累…じゃない。
累なら糸で切り殺す。
なら、一体…
『あら、貴女、まだ生きていたの。』
「…!」
目の前に現れたのは、『母』役の鬼だった。
『そう固くならないで?貴女は累のお気に入り。』
『手出しはしないわ。』
嫌われている、妬ましく思われている。
この鬼の目付きで分かった。
「どうして、この人を───────」
『どうしてなんて、そんなの』
『私達が鬼だからよ。』
「そう、ですね。」
鬼は食べねば死んでしまう、そうだけど。
『死にたくて来たと聞いたわ。』
『早く死んで、餌食になればいいのよ。』
「…っ………」
心から言ってるように聞こえる。
『所詮、身も心も汚れている小娘でしょう』
『早く、消えればいいのよ。』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。