第5話

シャチアゲ(死ネタ要素あり)
226
2024/04/01 23:23
はぁ、と重いため息が狭い部屋の中で吐かれる。少しカーテンを開ければとても眩しく、そして暖かい日差しが窓から入ってくる。今日の天気は、彼女の今の感情と驚くほどに反対だった。
紅島アゲハ
…今日こそ、シャチに謝らなきゃ。
自分に言い聞かせるようにそういい、いつもつけているアゲハ蝶のイアーフックを右耳につけようとする。
紅島アゲハ
…あ、落ちちゃった。
なぜか左耳に上手くつけられないイアーフック。それは、このイアーフックが、「銀条シャチ」からもらったものだからだろうか。
「銀条シャチ」は、「紅島アゲハ」にとって、最初で最高の友達だった。元々2人ともいじめられていたという境遇にいたからなのか、はたまた運命か。初めて会ったときから2人は磁石のように引き寄せられ、そしてあっという間に仲良くなった。
だからこそ、なのだろう。ちょっとしたすれ違い、彼女がこんなに落ち込んでいるのは。
紅島アゲハ
なんであんなこと言っちゃったのかしら…。シャチは私のことを考えてくれてたのに…。
さて、こんなふうに自分で昨日のことを思い出されたとしてもおそらくピンとこないだろう。そのため、少しだけ回想を挟むとしよう。
銀条シャチ
お嬢!
紅島アゲハ
あら、シャチじゃない。どうしたの?
銀条シャチ
少し渡したいものがあって…。
長くつやつやとした黒髪を揺らしながら、自分よりも身長の低いアゲハを見る。シャチは、自分の手を後ろに回し、手の中にあるものを見られないようにアゲハに近づく。
紅島アゲハ
…なぁに?すごく嬉しそうだけど。
銀条シャチ
え、そんなに表情に出てました…?
紅島アゲハ
まあね。すごい変わってるってわけじゃないけどシャチの表情の変化には私は敏感だし。長い間一緒にいるしね。
銀条シャチ
…ふふ、そうですか。
あまり上がらない口角を少しあげ、頬を緩ませるシャチ。
そして、シャチが後ろに回していた手をアゲハに向けて差し出した。
銀条シャチ
新しく買ったイアーフックです!今お嬢がつけているイアーフックもそろそろ替え時かなと思って買ってみたんです!どうですか?
紅島アゲハ
………え……。
ぴしり、と時間が止まった気がした。「なんで」という疑問だけが頭の中を駆け巡った。









































 なんで、そんなに新しいイアーフックに変えて欲しいの?





































 なんで、このイアーフックがもういらないみたいなことをいうの?





































 …なんで?あの約束を、忘れたの?
銀条シャチ
このイアーフック、あげます!お嬢と私が、いつまでも一緒にいるためのお守りです!捨てたり無くしたりしないでくださいね、約束です!
紅島アゲハ
っ………!
銀条シャチ
お、お嬢?顔色が悪いようですけど…。
紅島アゲハ
…ごめん、それいらない。あと、今日は話しかけないで。
銀条シャチ
えっ?お嬢?
混乱したような表情のシャチを残し、彼女は教室から出て行った。
…彼女たちがその日、顔を合わせることも話すこともなかった。
紅島アゲハ
はぁ…。シャチが私との約束を忘れるはずないのに。多分、少しイアーフックが汚れ始めてるから周りに見せる時はこのイアーフックをつけたら?という意味だったんでしょうね…あの子ならそういうこと考えそうだし。
ぶつぶつとそう呟きながら学校へ行くために玄関へ向かう彼女。表情は相変わらず暗く、足取りもどこかおぼつかない。
「シャチに早く謝らないと」
そのような思いと責任感が今の彼女を押し潰している。










































だから、なのだろう。いつもなら耳に入るはずのテレビのニュースが、彼女には聞こえなかったのは。
それ以外、何も考えられなくなっていたから、こんなにも大切なニュースを、聞き逃したのだろう。










































『次のニュースです。椿が丘中学校に通う「銀条シャチ」さんが、交通事故で亡くなりました。』
寒華ちゃん
寒華ちゃん
……えー、勢いのまま書いたけど見直したらかなり暗かった。
寒華ちゃん
寒華ちゃん
花満市さん、リクエストありがとうございます!そして死ネタにしてしまいすみません、これしか思いつかなかったんですよ!((
寒華ちゃん
寒華ちゃん
あの本当に申し訳ございません。だけど私はこういうの好k((
こいつは殴っておきます(^ ^)

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