第11話

シブコイ
148
2024/05/30 21:36
突然の質問だが、もしもあなたが「 恋愛相談 」を受けたらどうする?
もちろん、内容やその相手にもよると思うが、自分がそのような状況に立たされた場合、自分がどのような反応をするのか、少し想像してみて欲しい。
さて、今から語られる話は、そんな恋愛相談を受けた1人の少女の話だ。
恋珊瑚クリオネ
恋愛相談に乗って欲しい……ですか?
カチカチ、と時計の秒針が正確な鼓動を鳴らす。短い針は、「5」という数字を指している。
2人しかいない寂しい教室でそう言葉を紡いだのは1人の少女。壁一面に貼られてあるとても大きな窓から差し込む夕陽は、ショートベールを照らしている。
いつも目を伏せがちの彼女だが、今日はいつもより瞼を閉じているようにも見える。確かに、この時間帯から差し込む夕陽はとても眩しい。特に、この教室の窓は西側に貼られてあるから尚更、だ。
……と、そんなことは置いておいて、本題に入ろうか。
モブ
はい、あの、恋珊瑚さんは渋柿さんとも仲良いと聞いていますし、口も上手で頼りになると聞いているので、できれば……!
ショートベールをつけている少女……「恋珊瑚クリオネ」の向かいに座った彼女は、そう言い話を切り出す。
恋珊瑚クリオネ
えっと……話を聞く限り、お好きな方は渋柿様、でしょうか?
モブ
あ、言い忘れてましたね、すみません……。
そのように、少しぎこちない敬語で会話のキャッチボールを始めた2人。クリオネは誰に対してもこのような口調だが、相手もいつも敬語なのだろうか?

……いや、ただただクリオネと話したことがないだけ、という説の方が有力か。
恋珊瑚クリオネ
なるほど……わたくしはあまり恋愛と関わったことはないのですが、できる限りお手伝いいたします。
彼女がそういうと、恋愛相談を持ちかけてきた少女はキラキラとした目で身を乗り出し、ありがとう、とその5文字の言葉に口を動かす。その言葉を何度も何度も復唱している彼女に対しクリオネはこう言う。
恋珊瑚クリオネ
いえ、困っている人の相談に乗るのは当たり前のことですから。
口元に微笑を浮かべ、そう言うクリオネは本当に天使のようだ。実際、彼女からすれば恋愛相談という面倒臭い話題に乗ってくれただけでもかなり助かる、天使のような存在なのだろう。
恋珊瑚クリオネ
そうですね……まずは渋柿様の何が知りたい、とかそういうのはあるのですか?
クリオネがそう尋ね、彼女が答えようとしたとき、2人の会話は下校時間を知らせるチャイムによって強制終了させられた。むしろここからが本題なのに……と口を尖らせる少女たちは、名残惜しそうに教室からでていった。
もちろん、「明日も少し話そう」という約束をして。
恋珊瑚クリオネ
……あれ?渋柿様、まだ残っていらっしゃったんですか?てっきりもう帰ったのかと……。
渋柿タイマイ
ああ、まあ実際学校でやらなきゃいけなかったことは少し前に終わったな。
クリオネが彼女の相談を聞き終わり、学校から出て、ふと目についたのはとある親しい友人の姿。普通の人、と言うのには少し勿体無いような整った容姿に、昔は少しドキドキしていたが、今ではもう慣れたもので普通に話すことが可能である。
……というのは「先ほどの相談がなかったら」というのが前提で。
そう、お察しの通り、彼があの少女の恋愛対象である、「渋柿タイマイ」という少年。年が少ないと書いて少年と読むわけなのだが、雰囲気や佇まいが他の人と比べて少し……いや大分大人びている彼は、少年と言う言葉は合わないような気がする。かと言って他に会う言葉がないので、今は少年、と言っておこう。
恋珊瑚クリオネ
(あの話の後に渋柿様と喋るのは少し罪悪感がありますね……。)
そう心の中で言うのだが、そんなことを相手に言うわけにもいかない。
だから、彼女は口から出そうになったその言葉をグッと飲み込み、いつもと変わらない微笑で会話を続ける。
恋珊瑚クリオネ
そうなのですね。でしたら、なぜこの時間帯までここに残っていたのですか?
彼女はそう聞くと、タイマイから返ってきたのは予想外の返答。
































































渋柿タイマイ
恋珊瑚と帰りたかったから。
渋柿タイマイ
……「 友達 」と一緒に帰りたいと思うのは、悪いことじゃないだろ?



























































____何事もないように、そんなセリフを言う彼に。
いつもは無表情なのに、少し口角を上げ、目を細めるその姿に。
心臓が、バクン、と跳ねた音がやけに大きく聞こえた気がした。
顔が、熱くなった気がした。
恋珊瑚クリオネ
(……いやいや、何を考えてるんですかわたくしは!わたくしはあのお方の恋愛のお手伝いをすると決めたのでしょう……?)
そんなふうに、必死に心の中で弁明を重ねる彼女。顔を手で隠しながらぶんぶんぶんと顔を振り、熱を冷まそうとする彼女をタイマイは不思議そうな目で見ている。
渋柿タイマイ
え、えっと……恋珊瑚、大丈夫か?
その言葉で、ふっと我に帰るクリオネ。手を顔から外し、少しぎこちなく首を動かしタイマイの方に向く。
恋珊瑚クリオネ
い、いえ。大丈夫ですよ。待っていてくださりありがとうございます。それでは、参りましょうか。
これ以上問い詰められないようにそう話題を変え、家の方向に向かって足を進め始めた。
……もしも。
もしも、彼女がタイマイが付き合ったら。























































恋珊瑚クリオネ
(このように一緒に帰ることも、少なくなるんですかね……。)
そんな、考えてもどうしようもないことをふと頭に思い浮かべる。
隣にいるのは、学校指定の鞄を手に持った、親しい友人の姿。
当たり前の光景であり、今までにもこの横顔は何度も見てきた。
この光景を、他の人に譲るのは、少し寂しいと、そう思ってしまう。
恋珊瑚クリオネ
(……いえ、ダメです。そんな考えは。)
そんな考えに終止符を打ったのは、彼女自身。
恋珊瑚クリオネ
(……だって、わたくしは全人類を幸せにしなくてはならないのですから。それには彼女も含まれています。彼女の幸せのためにも、お二人は結ばれなければ……!)
だから。
……だから。
こんなにも顔が赤いのは、夕陽のせいだ、多分。
寒華ちゃん
寒華ちゃん
シブコイ!
寒華ちゃん
寒華ちゃん
いやぁ、初めましてのペアだけど案外上手く書けたかもしれん
自画自賛は良くないぞ
寒華ちゃん
寒華ちゃん
あ、そうだ(ガン無視)
寒華ちゃん
寒華ちゃん
新作出したのでもし興味があれば見てくれると嬉しいです!
寒華ちゃん
寒華ちゃん
お願いいたします……!

プリ小説オーディオドラマ