事件の詳しくは、こう。
私達が莉央先輩に初めて会った日、のんちゃんは莉央先輩が王子様なんかじゃないことを見抜いていた。
ある日、たまたま廊下で先生と話している莉央先輩を見て、会話を録音した。
……ように見せかけた。
実際はそんな暇なかったらしくて。
が、見事に歩斗先輩が先生を脅s……説得し、歩斗先輩の冤罪は晴らされた。
その後、莉央先輩はどうなったのかな。
明日は学校だし……。
歩斗先輩が強いのは本当だった。
でも、女遊びだとか性格が悪いとか……あかりさんのこと
とか。
直接聞かなくちゃいけないのはわかってるのに、なんだか
怖い。
その『怖い』は、何に対してなんだろう。
教室に入ると、幸助くんが元気よく挨拶をしてくれた。
あーあ。
変な噂が広まっていないといいけど。
クラスメイトの子、悪意あるよね……って、のんちゃん、
抑えよっか!?
まぁ、しょうがないよね。
一緒にいると、なにか言われるだろうし。
トコトコ
ギュッ
良かった。
いつも通りの学校に戻った気がする。
だって、今、みんなで笑えている。
とても、久しぶりに。
歩斗先輩と話したいな……。
そんなことを考えていたからか、帰り道、偶然先輩に
会った。
いつもと変わらない優しい笑顔。
「一人で帰らせるわけには行かないでしょ!?」
と、心配してくれたのんちゃんは、先生に呼び出されて
しまった。
今もまだ少し怖いけど……。
私だって強くなきゃ。
そりゃそうだよね!
びっくりされるよね!
あ……。
歩斗先輩の申し訳無さそうな顔。
合わせてくれない目。
「やっぱりいいよ」なんて言いそうにない雰囲気。
トコトコ
覚えているのは、先輩の背中だけ。
この後、どうやって家まで帰ったっけ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。