めるとくん!
めるとくん!
めるとくんってだれ?
だれだっけ?
だれかが呼んでいるの?
ぼくのことを…。
その声はろきだった。
目を開けると、とても嬉しそうな顔で
こちらを見つめていた。
「ろき!
お掃除終わったんだね!
お疲れ様!!」
「あ、ぼく帰らなくていいのかな?
でも…帰る場所はないか…。」
【めるとくん、
きみのお家は今日から正式に、この松ぼっくりハウスだ!僕たちは家族だよ^_^】
「ろき!!
本当!?ぼく、ここにいていいの?
ぼく、ぼく…うっうっ…ひっく…」
「うわぁあああん!!」
「ろきありがとう!!!!」
「え?あれ?まって!ろき!どうしてぼくをめるとくんって呼ぶの!?」
「その名前はさっき ほぐ っていう男の人が教えてくれたんだ。」
「そうだ!!ぼく、ほぐにギュッてしてもらって
眠っちゃったんだよ!」
「……なんで!?」
ぼくが見たのはベッドの横に置いてある椅子だった。
夢だったんだ…。
…でもなんでろきはめるとっていう名前を知っているのかな?
【めるとくん、落ち着いて!
今、夢だったんだって思ってたでしょ?w
ほぐさんとお話をしたんだよね?】
【めるとくんが眠っている間に、ほぐさんから聞いたよ。】
「夢じゃなかったんだ!!!!
よかった!!!!」
「とっても素敵なお目目をしていたんだよ!!!!」
【そうかそうか^_^】
ぼくは椅子のほぐを見つめた。
そうだ、ちょうどこの椅子の後ろに付いている宝石のように、深く深く、美しかった。
「ほぐ、椅子に戻っちゃったの!?」
【どうやらほぐさんが人間になるには、
条件が必要なようだね。】
【人間になるというのか…、戻れる、なのかもしれないけど…。】
小屋の扉が開いた時、
ほぐはあのときも…
小屋の中で助けてくれたんだ。
あれ?でもなんで人間になって助けてくれなかったんだろう?その方が手っ取り早そうだけど。
いや、なったのかな?
じゃないと動けないよね…。
まさか…ぼくに姿を隠していたのかな?
そうだとしたら、さっきはなんで
人間の姿をぼくに見せてくれたんだろう。
また頭の中がぐるぐるする。
今のぼくは現実を受け止めるだけで精一杯だ。
頭が痛い。
【何か強力な力が働いていているようだね。】
【ほぐさんには。】
【元は人間なのか、椅子なのか…
そこまでのことは、僕にはわからない。】
【彼も話そうとはしなかったよ。】
強力な力?なんだろう?
魔女の恐ろしい魔法とか?
ほぐはまさか…呪われたの?
どうして!?そんな怖いものがこの世にいるの!?
【めるとくん、落ち着いて^_^】
【強力な力とはいったけど、僕はほぐさんに悪いようなものを感じないから、そんな不安な顔しないで!】
【さ、松ぼっくり茶を飲もうか!美味しかっただろう?】
【草も刈ってきたからね!ほぐさんにお座りなさい。ほぐさんも喜んでくれるはずだよ。】
そういってろきはコトコトとお茶を沸かしてくれた。
またぼくは、この松ぼっくり茶を一口
口に含み、苦味と甘い香りを楽しんだ。
その時また、ぽつぽつと雨が降ってくるのを感じた。
あの雨とは違って
優しく静かに松ぼっくりハウスを叩いていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!