目黒side
勢いよくラウールがスタジオの扉を開ける
「雨音ちゃん?!」
室内は暗く静まり返っている
「ねぇ、めめ。いない!雨音ちゃんどこにもいないよ!!」
泣き出しそうな顔をするラウール
「大丈夫だから落ち着けって。まだしょっぴーも康二も庭探してくれてるし舘様もバスルーム探しに行ってくれてるでしょ」
ラウールの背中をさすりながら
「とりあえずここにはいない。リビングに戻ろ」と声をかける。
階段を上ろうと動き出した俺の腕を掴んでラウールが話し始めた
「雨音ちゃん、僕達が嫌なのかな…僕ずっと雨音ちゃんのみんなを見る顔が怖かったんだ…泣き出しそうな…それでいて怒っているような…雨音ちゃんに何があったかなんてわかんない。昨日知り合ったばかりだけど…だけど僕あの子の笑った顔を見てみたい……雨音ちゃんは…きっとずっと心で泣いてるんだ…助けてあげて…助けてあげようよ…めめ…」
俯いて涙を堪えるラウール
雨音ちゃんに何かあったんであろう事は俺も薄々感じていた
それはSnowManのメンバーも同じだろう
だけどラウールはまだ高校生だ
最年少ながらもSnowManのメンバーに入ってセンターを任されプレッシャーも半端なかっただろう
周囲の目を人一倍気にしていたのかもしれない
だからこそ周りに気を配って人の心を敏感に感じ取ってしまうのかもしれない
純粋で真っ直ぐなラウール
俺は黙ったままラウールの背中をさすることしかできなかった
しばらく待ってラウールが落ち着いた頃
ラウールの手を引いてリビングに戻る
康二としょっぴー、舘様が俺たちに気づき駆け寄って来る
「おった?!雨音ちゃん!」
康二がすぐさま聞いてきた
「いなかった、そっちは?」
俺が聞き返すと
「庭も康二と探したけどいなかった」
と、しょっぴー
「バスルームにもいないしテーブルの上に置き手紙とかも探したけどなかったよ」
と舘様が続いた
みんな黙っているとリビングの扉が開いた
頬に傷ができてる岩本くんを支えるようにして阿部ちゃんが入ってくる
その少し後ろからふっかさんと佐久間くんも戻ってきた
「舘様一応救急箱持ってきて」と阿部ちゃん
「照兄どないしたん?!」康二が駆け寄ると
「雨音ちゃんベッドの下にいたんだ。うなされてたっぽかったから、落ち着かせたくてベッドの下から出そうとしたんだよね…」と佐久間
「そしたら急に暴れ始めて照の頬を引っ掻いたんだ。傷はそんな深くないけど…照、一応絆創膏貼るよ?」とふっかさんが岩本くんに聞いている
頬の痛みよりも何か他の事にショックを受けてるような岩本くん
「雨音ちゃん…俺が腕を掴んだ時やめて!って言ったんだ…も〜やめてお義兄ちゃんって…」
「え…」思わず声に出る
「ベッドの下で寝てたのって……」その先を言う前にしょっぴーのあっと言う小さな声がした
目線をしょっぴーに向けると
「雨音ちゃん…」とリビングの扉に向かって言うしょっぴー
いつ扉を開けたのか誰も気づいていなかったようで一斉にみんなが雨音ちゃんの方を見る
急に振り向かれた事に萎縮してしまったのかビクッと体を震わせ俯いてしまう雨音ちゃん
お腹の前で両手をギュッと握りしめている
小さな手が微かに震えているように見える
意を決したのか真っ直ぐこちらに向かって岩本くんの前で立ち止まる
俺の横で立ち止まる雨音ちゃんを横から眺める
俺の肩くらいしかない背丈
長い黒髪は真っ直ぐ背中くらいまで伸びている
俯いた目元には長いまつ毛
年齢の割には少し幼さが残る横顔
俯いていた顔を上げて真っ直ぐ岩本くんを見る目
不安気だった横顔は凛として綺麗だった
間違いなく美少女だ
「ごめん…なさい……」
小さな声で雨音ちゃんが言う
一瞬驚いた顔をした岩本くん
いや、みんなが驚いていた
一瞬目を伏せてから真っ直ぐ雨音ちゃんを見返す岩本くん
「雨音ちゃん…俺達が怖い…?」
岩本くんの言葉に全員が黙った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!