黒霧のワープに吸い込まれた後
私は皆と離れて、一人
中継されている映像を見ていた
先程から先生が私に言った言葉が頭を離れない
先生は私のことなんて使い勝手の良い駒としか見てないだろうに
それを分かっていても、心のどこがで喜んでる自分が居るんだ
急に後ろから声をかけられ少し驚いたが
声の主は燈矢兄だった
そう燈矢兄は言うとつまらなさそうに頬杖をついた
私は燈矢兄を見て、にこ、なんて不器用な笑顔を浮かべ
そこまで言うと、燈矢兄は黙ってしまった。
その時、まだつけたままのテレビから大きな声が聞こえた
てっきり、先生が負けたら
「悲しい」とか 「悔しい」とか
そんな感情が生まれるかと思っていた。
なのに今は不思議と冷静に現実を受け止めていた。
先生に頼られて嬉しいと思ってたと同時に
駒と見られているはやはり思うところがあったらしい
私はそう呟くとテレビの電源を消し、
燈矢兄と共に皆の元へ戻った
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!