敦said
羽那さんの様子が気になったのだが、今は一人にして欲しいという雰囲気を読み取ったので大人しく
仕事に戻ろうとした際、国木田さんに止められた。
「太宰が居らん。何処か知らんか?」
「太宰さんですか?・・・知らないですね」
彼が仕事中に居ないのは日常的だから放って置いていいと思いますという僕の意見は心の中だけにしておこう。
「全く・・・午後迄には戻る様に連絡しといてくれ」
「連絡した所で帰って来るとは思わんが。」と付け足した国木田さんの言葉を聞いて、連絡するだけ無駄では・・・と思った此の意見も口に出さず、僕は返事をしたのだった。
太宰さんにメールを送ったから良し。
(治療中で)度々聞こえてくる立原という男性の叫び声にも慣れてきた頃、「すんませーん」と扉の隙間から手だけを覗かせヒラヒラと振る人が居た。
「チョッっと頼み事、オケ?」
隙間からグッドポーズで聞いて来た。
如何やらかなり陽気な人が依頼に来たらしい。
グイグイ来る人は苦手なんだよなぁ。思いながら「どうぞー」と顔も見らずに案内をし、依頼内容を聞こうとして、顔を見た時に僕は本当に本当にびっくりしたのだ。
髪の毛は銀色で、唇と耳にピアス。腕輪もはめ指輪は右手に二つ。何れも大きい。服はパーカーに英語で何か書かれており黒のダメージジーンズを履いている。
・・・陽気な人レベルじゃない。この人は不良だ。
見た目で判断するのは良くない何て知ってる。
だけどこれ見たらそう思うでしょ!!!
「おい」
「ヒイッ」 ((※ヘタレ発動中))
僕の間抜けな声に呆気を取られたのか、少しの間の後、男性は大笑いを始めた。
・・・ちょっと待って。舌にもピアスしてるの!?
ええもう本当に嫌だ。
見た目が本当に怖そうだよ此の人。
僕カツアゲされちゃうよ。 ((※ヘタレ発動中))
僕の態度で気付いたのか、(そりゃ気付くわな)
笑い終わると「そんなにビビんじゃねーよ」と明るい声で言われた。
「すいません(汗)」
「ま、慣れてるから良いけどな」
「すいません・・・」
何だか申し訳なくなってもう一度謝ると「ペコペコすんな。男だろ?」と言い二ヒヒと笑ってみせた。
如何やら僕の勘違いだったようだ。
此の人は全然不良なんかじゃなくて良い人・・・
「あ、俺あの女めっちゃタイプ」
・・・コホン、前言撤回。
「な、あの女、名前何て言うんだ?」
男性は興味津々で聞いて来る。
この人が言っている女性とは羽那さんのことで
あるので名前を教えることも出来るが、個人情報
だし、マフィアの人間だから教えたら拙い。
だから「さあ・・・」と適当に返した。
然し男性は諦めない。
「知らねーなら聞いて来る。」と言い、何と名前を聞きに行こうとするのだ。勿論僕は止める。
「ナンパはやめて下さい!」
「可愛い子には手を出してなんぼ✨(ドヤ顔)」
・・・・・・なんだ、此奴。( '-' )
呆れて言い返す言葉が出ずにいると「じゃ!」と羽那さんのところに行こうとするから全力で止める。
「離せよッッ」
「離したら羽那さんの所に行くでしょッ!?」
・・・あ、口が滑った。
思った時には時すでに遅し。
男性はニタァと意地の悪い笑みを浮かべている。
「名前知ってるじゃねーかよー。早く教えろよー」
「・・・守秘義務があるんですよ」
「へー。よし、羽那をナンパしてくる。」
「!?だから待ちなさいって!ナンパするなんて公言しないで下さい!!」
てか何で既に呼び捨てなんだ。
「ん?もしやお前も狙ってる?」
「違います!!!」
「なら別に良いだろー」
否、そういう事じゃ無いだろう。
そもそもあの人は恋人が居るわけで。
あ””ーーーーーもう!
「はぁー・・・・・・依頼に来たんじゃないんですか?」
言いたいコトがまとまらずに出た一言。
聞いた男性が急にクルリと此方を向く。
然して平然とした顔で。
「やっぱいーわ。見つかったから。」
「・・・・・・・・・へ?」
僕が疑問の声を出した時には、彼はもう羽那さんの処へと向かって行っていた。
・・・見つかったという事は人探しの依頼?
でも、今の間に見つけたという事は・・・・・・
「探していた人は・・・・・・・・・羽那さん?」
何で羽那さんを?
もしや運命の人を探しに探偵社に来たとか?
陽気で不良なあの人のことだ。
あの人なら有り得るかもしれない。
「全員こっち向いてーーーー」
先程の男性の声。
無意識にその方向を見た、探偵社一同。
_______________僕は気付いていなかったのだ。
彼が羽那さんを捕まえようとする組織の一人だというコトを。_______________
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。