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宴を見飽きた少年は
がちゃり、と扉を開け部屋に出る
廊下に居た従者の声は無機質で
それに返した少年の声も、酷く落ち着いていた
___というよりもむしろ、感情が無かった
と言った方が正しいのかもしれない
軽く頭を下げる従者のことは見向きもせず
少年は庭へと続く廊下を歩き出した
♢♢♢♢
宮殿内に響く声を聞き流し、
宴の場がある南庭とは王宮を挟んで反対側の
小さな池のある北庭へ向かう
池の側に寄り、木陰で小さく深呼吸する
南庭とは違い 静かで風情ある景色が広がる北庭は
少年のお気に入りの場所だった
反対に、彼の父は南庭を気に入っており
それ故に北庭には庭師も家臣もあまり近付かなかった
それが、少年が北庭を気に入った理由でもあった
少年は庭に転がっている小さな石を蹴って
ぼそっと呟いた
先ほども言った通り、北庭には
人が寄りつかないはずだった
しかし少年の独り言には、返事があった
辺りを見渡しても人は居ない
言われるがままに天を仰ぐと、
ちょうど少年が立っていた側に生えていた木から
少年と同い年くらいの男子が
飛び降りてきた
この地域では珍しい紫色の髪をした彼が
少年の真上を飛び 目の前に着地する直前、
少年は驚きのあまりバランスを崩して
そのまま背後の池に落ちた
バシャンッッッ!!!!!
と勢いよく音は鳴ったものの、
それなりに浅い池なので
少年の服と髪が濡れた程度で済み、
幸い溺れはしなかった
紫髪の彼は苦笑しつつ、
少年の手を引いて起き上がらせた
濡れた服を絞りながら、少年は無愛想にそう言った
いるま、と名乗った少年が
呆れた顔で言いかけた言葉は
思わずらんの笑顔に目を奪われ、途切れた











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。