第49話

#48 夏祭り
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2026/05/17 13:00 更新







そのままの流れで、

先輩はうちに泊まることになった。



夕方。

着替えて、2人で家を出る。



向かうのは、

母さんに言われた通り、

近くの街でやってる夏祭り。



jk「……人、多そうですね」

v「まあ、夏だしな」



軽く返す先輩の

横顔を見ながら、歩く。



少しだけ、胸がそわつく。



……デート、みたい。



そんな言葉、絶対言えないけど。

街に着くと、思ってた以上だった。



屋台の灯りがずらっと並んで、

焼きそばの匂いとか、

甘い綿菓子の匂いとか、

いろんな音と声が混ざってる。



jk「……すご」



思わず声が漏れる。

でも同時に、

…ちょっと、しんどいかも



人の多さに、

頭がくらっとする。



その瞬間、

手首を掴まれる。



v「ほら」



そのまま、指が絡む。



v「逸れるなよ」



低い声。

当たり前みたいに繋がれる手。



……あ。

一気に心臓がうるさくなる。



jk「……は、はい」



返事がちょっと変になる。

嬉しいのに、

それ以上にドキドキが強すぎる。



人混みの中を、

手を繋いだまま歩く。



…離したくない。

そう思ってる自分に気づいて、

また少しだけ顔が熱くなる。



でも、

だんだん、

気分が悪くなってくる。



視界が少し揺れる。

それに気づいたのか、

先輩が立ち止まる。



v「……顔色、悪い」

jk「え、」



否定しようとしたけど、

その前に腕を引かれる。



v「こっち」



人の少ない路地に

連れて行かれる。



少し奥に進んで、

ベンチのある静かな場所。



v「座れ」

jk「……すみません」



言われるまま座る。

隣に、先輩も座る。

少しだけ距離が近い。

肩が触れそうな距離。



v「……大丈夫か」

jk「ちょっと、だけ」



正直に言う。



先輩は何も言わず、

そのまま隣にいてくれる。



それだけで、

少しずつ、楽になる。



静かな時間。

遠くから

祭りの音だけが聞こえる。



そのとき、



「ねえ」



声をかけられる。

顔を上げると、

女の人が2人。



「よかったら
 一緒に回らない?」



いわゆる、逆ナン。

一瞬、固まる。



どう返せばいいか

わからない俺の前で、

先輩が口を開く。



v「間に合ってます」



即答。

迷いもない。

その言い方が、

やけにかっこよくて。



……ずるい



胸がまた変なふうに鳴る。

俺も、少しだけ遅れて言う。



jk「……間に合ってます、俺も」



女の人たちは、

顔を見合わせて、



「えー、つまんなー」



って言いながら

去っていく。



静けさが戻る。

そのあと、

また手を握られる。

さっきより、少し強く。



jk「……どうしましたか」



そう聞くと、

先輩は少しだけ俯いて、



v「……どこにもいくなよ」



ぽつりと、落とす。



……え。



意味を考える。

今この瞬間のことなのか、

それとも、

もっと先のことなのか。

わからない。



jk「……?はい……?」



曖昧に返すしかない。

その瞬間、

ぐいっと顔を引き寄せられる。



jk「っ、」



唇に、触れる。

一瞬。



でも確かに、キスだった。

頭が真っ白になる。



離れたあとも、

何も言えない。

顔が、たぶん、

首まで真っ赤。



それを見て、

先輩がくすっと笑う。



v「お子ちゃまだな。まだ」



揶揄うみたいに。



jk「……っ」



悔しくて、

でも恥ずかしくて、

ぐちゃぐちゃになる。



jk「……先輩のせいです」



やっとそれだけ言う。

すると先輩は、

少しだけ目を細めて、



v「……知ってる」



って、小さく笑った。

その笑い方が、

やけに優しくて、

……やっぱり、ずるい。



そう思いながら、

俺は繋がれた手を、

少しだけ強く握り返した。












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