戸を開けられて早々、抱き締められる。
この黒髪はどうやら須磨ちゃんの様だね。
何故か抱き締めたまま涙目の須磨ちゃん。
と、案内された先は、いつも天元くんの眠る寝室。
どうやら熱でも出したのか、
布団で寝込んでいる天元くん。
熱で汗が凄く、着ている寝間着もはだけていた。
あれだね、免疫のない女性だったら、
多分卒倒するね。ただでさえ顔が良いし。
後ろから部屋に入ってきたまきをちゃん。
そんな、気遣いなんて…
どうやら言う前に行ってしまったようだ。
足は流石のくのいち。速いね。
今度は後ろから雛鶴ちゃん。
口を緩めて、笑顔で迎えてくれる。
薬の入った風呂敷を渡すと、安堵した様な顔をする。
そんなに酷いものなのかい?
あぁなるほど、そういうことかい。
手を軽く握り、おでこに持っていく天元くん。
弱っている天元くんを見るなんて、
人生に一度じゃないかい?
おぼんを持って、戻ってきたまきをちゃん。
その上に乗せたお茶と、そのお供。
美味しそうな、
こし餡とつぶ餡のおはぎが置かれていた。
ほ、ほう、あの実弥くんが、お見舞いね…?
駄々をこねる子供か、と突っ込みたいところだが。
まぁ耐えようかい。
また、爽やかな笑顔を浮かべて、
私に気を使ってくれる。
三人は退室し、雛鶴ちゃんが障子を閉じる。
どうやら聞き耳を立てようとした須磨ちゃん。
それを止めたまきをちゃんが騒ぎ、
雛鶴ちゃんが回収、と。(笑)
その後に、三人の声が遠ざかっていく。
と、上半身を起こし始める。
つまり、騙していたということで良いのかな?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。