ci視点
少し揺らせばカランッと氷の心地よい音を出す、冷たいアイスコーヒーを一口飲んだ大先生が急に俺に振る
はは…、
偽って笑ってる姿が綺麗に見えてたんか、この人には
とは言え話しやすい空間を設けてもらったのはありがたい
そこから俺は少しずつ話し始めた
ぽつりぽつりと、本当に少しずつ
大先生とロボロさんは体をやや前のめりにしながら話を聞いてくれた
こんなふうに、少しジョークも挟みつつ
気づけば俺は自分の気持ちを全部吐き出していた
目頭が随分と熱い
視界もぼやけ始めている
最後まで、話を聞いてくれた二人はしばらく黙っていた
誰も何も話さない
きっと、この二人も、自身に重なる部分を思い返しているのだろう
机の真ん中にあるマリーゴールドが静かに俺達を見ている
そんな中、一番に口を開いたのはロボロさん
ロボロさんは俺の全部を知った気になったりするような人ではない
『自分には他人の痛み全てがわかるわけがない』
そう考えているからか余計なところにまで踏み込んでこない
その考えが心地よくて…少し心が軽くなった気がする
ロボロさんはまだ湯気のたつエスプレッソに瞳を映しながら再び俺に声をかけた
突然そんなことを言われれば誰だって驚く
そんな俺を気にせずに大先生は俺の右手を掴んだ
ひとたび瞬きすれば俺は雲一つない青い空の下に出ていた
ロボロさんの怒鳴り声が背中に響いていく感覚を残しながら
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。