重岡side
あれからあなたも点滴のおかげで
強く握っていたタオルも今は軽く握って
静かに寝ている。
膝枕してもらっている小瀧もあれからほんまに寝て
膝枕している濵ちゃんも腕を組んで俯いて寝ている。
淳太と照史も小さい椅子に座って壁に寄りかかって
寝ている。
流星は…うん、立って寝ている。
俺もどこで寝ようか迷っていると
神ちゃんがキャスター付きの椅子をふたつ
持ってきてくれた。
多分神ちゃんは気を使ってくれたんやと思う。
俺があなたを心配しているのに気が付いたんやと思う。
ドヤ顔を決め神ちゃんは
ベッドに突っ伏してそのまま寝た。
まるで学生が授業中に机に突っ伏して寝ている
あの光景のようにスヤスヤ寝ている。
気持ちよさそうに寝ている神ちゃんをみて
俺もそのまま神ちゃんも同じように寝た。
あれから俺も熟睡していた時
微かにハァハァと誰かの声が聞こえ
眠たがったが目を開け声がする方に顔を移した。
俺が声のする方を見ると…
頭を抑えながら枕に顔を埋めとるあなたが居た。
点滴が切れたんやろう。
時々顔を顰めて痛みをこらえている。
右手をあなたの前に突き出して
左手でナースコールを押し先生を呼ぶ。
何コール目かで看護師さんが応答してくれて
直ぐに向かうと告げて電話を終えた。
向きを変えるとあなたは
より顔を顰めて痛みをこらえて
俺の右手を強く握っていた。
近くにあったタオルも一緒に握っており
俺の右手はそない痛くなかったんやけど
タオルの方が力強くて気を使ってるんやと思った。
すると俺の言葉に負けたのか
握っていたタオルをとって俺の手を取った。
そのままあなたは遠慮がちに俺の手を握った。
それと同時に痛みが増したのか
タオルよりも強めに俺の手を握った。
そして骨折していない方の右手で頭を抑えだした
あなた。
俺の声で神ちゃんも起きたがあなたを見ると
直ぐにテキパキと動き出した。
色々神ちゃんもやってくれてるとちょうど
先生が来てくれた。
点滴も素早く変えてくれてまたあなたは
瞼を閉じて寝てくれた。
先生もまた何かあったら呼んでくださいと告げて
そのまま看護師さんと部屋を後にした。
あなたの顔も顔を顰めて痛みを我慢していた時
よりも顔は穏やかでほんまにゆっくり
休めてるように見えて俺は安心した。
俺と神ちゃんは何事も無かったかのように
椅子に座ってさっきと同じように眠った。
でも今度とは違うのは
未だにあなたは俺の手を握っていると言うこと。
また痛めた時俺の手を握ってくれれば嬉しい。
そうすれば俺も直ぐに目を覚ますし気づきやすい。
それに痛みも何もかもはんぶんこ出来ると思うから。
麻酔によって寝ているあなたにそう声をかけ
俺も眠りについた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。