第110話

四班:2
5,104
2021/05/02 16:08


襲いかかってくる敵を手当たり次第に叩く


相手はやっぱりここの戦闘にまだ慣れていないみたいだ
ほらほら、そんなに大勢できたら突っかかっちゃうよ?

案の定、何人かが衝突してごたついたいる





まあ僕がわざとそれを誘発させるようにしたんだけど






僕には力と体のリーチ以外戦闘の才能はあんまりないから






力や技で勝とうとは思わないで

自分で環境を作って勝つ






ここでの戦い方の要領は今までの経験が役に立つ




少し手数が多い。



狭い場所に引き込む










僕は敵を誘導するように狭い路地へ走る


よし、付いてきた





ここを猛スピードで走って







今!素早く右の角に飛び移る

この曲がった先には、捨てられた有刺鉄線や鋭く折れ曲がった鉄パイプなどが落ちている
僕はそれを走り幅跳びの要領で飛び越え、近くの建物の外壁によじ登る







が、そんなことも知らない男たちは
僕が飛び越えた有刺鉄線の罠に引っかかる






何人かそれを避けてくるが、僕を見失ったようにキョロキョロしている











僕はここだよ、バーカ











僕は拾った鉄パイプを片手に、奴らの頭上から頭目掛けて振り下ろす

ひんやりとしたパイプが手に馴染む






向かってくるてきに鉄パイプを振り切る
ビチャっとコンクリートの壁に鮮血が飛び散り、僕にもかかる

時には鋭い先っぽで突き刺と、今度はアスファルトの上に血溜まりができる





ついてきた敵をひとしきり殴り倒す





握っていた鉄パイプがボコボコに曲がっている






















ソンチャン
ソンチャン
はぁ、やっと一息、、



そう言いながら新しい鉄パイプを拾った瞬間

後ろから殺気を感じて反射で前に飛び込む






後ろを振り返るとさっきの奴らとはなた一段と雰囲気が違うような男たちが現れた











こいつら、強い











僕の経験がそう叫ぶ



本当にその通りで、さっきの奴らとは比べ物にならないぐらい攻撃の質がいい
僕は必死で避けて反撃を繰り返すが

一向に数が減らない









ソンチャン
ソンチャン
...!!



僕はとうとう路地が集結する中心の

広い場所に追い詰められてしまった






敵は素早く僕を囲み込む





四方を囲まれてしまった、ジリジリと相手が詰め寄ってくる

怪しいゲスな笑顔を湛えながら。








僕は中心に追い詰められて、行き場もなく周囲を怯えるように詮索するしかなかった













その時

僕の横から男が1人吹き飛んできた















その奥の暗闇からは


ニコニコした笑顔を携えたタロヒョンが歩いてきた




ショウタロウ
ショウタロウ
僕の勝ちだね、ソンチャン
ソンチャン
ソンチャン
ヒョン.....!
ショウタロウ
ショウタロウ
大丈夫
ヒョンが手伝ってあげるね




そういうとヒョンは僕と背中合わせになる





「うわあソンチャンの背中あったかい!」




と呑気すぎるヒョンの発言に笑ってしまいそうになる










ヒョンは相手に向き合うと

一切迷いのない動きで相手の懐に飛び込む











そして
瞬きもしない間に敵を投げ飛ばし、それを近くにいた敵にまとめてぶつける



そしてすぐに目の前にいた敵に走り込み
腹に蹴りを喰らわすと




真反対の方向から、地上と上空から2人で襲いかかってくる敵を
フィギュアスケーターが回転するように

空中で回転しながら2人の敵の頭部に正確に回し蹴りを打ち込む













すごい反射と視野、それに情報処理












自分が次どう動くべきかなんて一切迷いが無く
その場でできる最善で最高に効率がいい行動をする






そして攻撃の精度と威力に全くムラがない



どんだけ不安定で無茶な姿勢でも、精度があって安定した攻撃を繰り出す

















この人は天才だ

ヒョンは 僕なんかよりもっとすごい人がいる って



否定するけど、これはみんなが認めている事実だ


















この強い力を持つ人が、ヒョンで良かった

彼なら、この力を間違えずに人のために使うことができるから














僕も負けじと鉄パイプを振り回す

この太刀筋も、前までは我流だったけど組織に入ってからはジェミニヒョンに
「剣道」を教わったのだ




ゆっくり、パイプを正中線に





冷静に。目を開いて







そうするとなんでだろう、不思議だ

自分の見えないところまで見えるようになった気分





全身に意識が流れ、隙がない感じ












見える












僕は深く息を吸い込むと

大声を出しながら思いっきり意識を前に持っていった










まっすぐ、大きく一歩、大振きく振り下ろすだけ













とても簡単で単純な技だが威力は抜群

後ろを見ると敵が何人も倒れている










そこからはもう、よく覚えていない
一心不乱に攻撃し、ひたすら避けた













もうどのくらい時間が経っただろう、

僕は最後と思われる敵に一撃を喰らわした












ふらふらになりながらタロヒョンの方を見ると、ちょうどヒョンが最後の1人にとどめを食らわせたところだった













タロヒョンは息を切らしながら僕の方を見る





寒かった夜が
たくさん動いたせいで燃え上がる体温で分からなくなり


生死を彷徨う攻防にアドレナリンが出て






顔を見合わせた瞬間、何故だか分からないけど笑いが込み上げてきた

僕らは同時に吹き出すと







声を上げてを笑った








僕らは笑いと疲労でフラフラになりながら近づくと
お互いに触れた瞬間バランスが合わなくってその場に倒れる





ヒョンはうつ伏せで、僕は仰向けの形で地面にぶつかったが何も痛くない

ヒョンは仰向けに寝返りを打ってまた笑う
息が吸えてないぐらい。





それに釣られて僕ももっと笑う







その間もその後も僕らはずっと、ひとしきり笑っていた



















夜に、僕らの笑い声だけが響いた



















ショウタロウ
ショウタロウ
はーー、なんでこんなに面白いんだろう!!
ソンチャン
ソンチャン
わかりませんっ!!!笑
ショウタロウ
ショウタロウ
なんだかすっっっっごい楽しい..!!!
ソンチャン
ソンチャン
僕も楽しいです!!!




僕ら笑う体力がなくなるまで笑い続けた







そしてそのあとはだんだん寒く感じてくる中、ずっと夜空を見ていた













暗い夜も、よく見たら星が光っている





ふと横を見ると星なんかに興味がないタロヒョンが
スースー寝息を立てている










こんなに可愛らしい人が鬼神のような戦いをするなんて誰も信じないだろうなあ笑




僕は着ていたジャケットを脱ぐとヒョンにかける

そしてその寝顔を見つめる



















この時間が一生続けばいいのに












僕は本気でそう思った

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